エリザベス・コルバート/6度目の大絶滅
(鍛原多恵子:訳 NHK出版 2015)



Amazon.co.jp : 6度目の大絶滅


地球ではこれまで5度の大量絶滅が起きている。
隕石衝突、火山活動、氷河期到来など、大規模な自然災害で多くの種が消滅した。
そして現在、サ ンゴ類の1/3、淡水産貝類の1/3、サメやエイの1/3、哺乳類の1/4、爬虫類の1/5、鳥類の1/6、植物の1/2がこの世から姿を消そうとしている。
それも急速なスピードで。
恐竜時代には1000年に1種だった絶滅が、いま、毎年4万種のペースで起こっているのだ。
このままでは、2050年には種の半分が消えてしまうかもしれない。
この大絶滅の原因はほかでもない、われわれ人間なのである・・・・・・!


現代作曲家・吉松隆の出世作朱鷺によせる哀歌」。

 

野生の朱鷺がついに日本から絶滅したことを聞いた作曲者が、最後の朱鷺たちに捧げた哀歌です。
吉松隆はこの曲の初演時のプログラムに、

 "人間がいつか滅びる時、美しい生き物が滅びてしまった、と涙してくれるものはいるだろうか? というつぶやきのような問いを添えて"

と記しました。


さて本書、

 エリザベス・コルバート/6度目の大絶滅

じつは地球ではこれまでに5度の「大量絶滅」が起きているそうです。

 オルドビス紀末の絶滅(約4億 5000万年前)
 デボン紀後期の絶滅(約3億7500万年前)
 ペルム紀末の絶滅(約2億5000万年前)
 三畳紀後期の絶滅(約2億年前)
 白亜紀末の絶滅(約6500万年)


これらを「ビッグファイブ」と呼ぶんだそうで、
とくに火山活動の活発化によるペルム期大絶滅では生物種のじつに95%が絶滅したそうです。

白亜期末の絶滅は巨大隕石の落下によると考えられ、恐竜を含む全生物種の70%が絶滅しましたが、哺乳類は生き残り、現在に至ります。
なお大絶滅といっても一夜にして死に絶えるわけではなく、数万年〜数十万年の出来事。
それでも地球の歴史からみるとほんの短い時間なのです。

 そしていま、「6度目の大絶滅」が起こっているそうです。

それは十数万年前にホモ・サピエンスが登場して、しばらくして始まりました。
彼らはネアンデルタール人を滅ぼし、マンモスを滅ぼし、他の種を効率よく狩る手段を進歩させ、火を自在に扱い、森を切り開きました。
つまり「6度目の大絶滅」の原因は我々ホモ・サピエンス(人類)なのです。
そして絶滅のペースは徐々に速くなり、ここ数百年で信じられないほどに加速しています。
そのスピードは、明らかに過去の5回を凌駕しています。

そういえば私が子供の頃、木にはミノムシがたくさんぶら下がり、
用水路にはメダカライギョが普通に泳ぎ回っていたものです。
ウナギだって高嶺の花ではありませんでした。
いまやこれらはみな絶滅危惧種。
絶滅危惧種のリストは増える一方で、たとえばサンゴは、次の世紀にはただの一種も存在しなくなると考えられています。
原因は地球温暖化と海水の酸性化。

 私の好きなガラケーと紙の本も、そのうち絶滅しそうですしね(←関係ない)。

本書は、現在進行形の大絶滅を現場リポートしたルポルタージュ。
大絶滅の原因は人間、その一方で絶滅を食い止めようと手を尽くしている人間もたくさんいます。
著者はそんな人たち(主に研究者)にインタビューし、山に登り、森に分け入り、海に潜ります。
その筆致は冷静にして淡々、ときにユーモラスですらありますが、「もう笑うしかない」ってのが現状なのかも。

この本を読んでよーくわかったのは、「人類が地球を支配している限り、この大絶滅を防ぐ手立てはない」ってことです。
「6度目の大絶滅」が終わるとすれば、それは人類が滅亡した時でしょう。
そのとき人類のために涙してくれる存在は、いそうもありません・・・。

 さて、とりあえずいまのうちにせいぜいウナギとマグロ喰っとこ(←この外道が!)。

(2015.06.16.)


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