豊島ミホさん、「檸檬のころ」からフォローさせてもらってますが、
ここ1〜2年の活躍ぶりにはかなり非常に相当凄いものがあります。
平凡な大学生のイタイ日常をリアルに描いた「神田川デイズ」
「人形愛」をテーマにした、ちょっと妖しい「ぽろぽろドール」
首都圏を大地震が襲うという設定の「東京・地震・たんぽぽ」
女子高を舞台に女子たちのきらめく感情の交錯を描いた「リリイの籠」(これは唯一ピンと来ませんでした。当然か)
など、新作を矢継ぎ早に発表、よく息切れしないものです。
実は、これらはみな連作短編集。
「連作短編の若き女王」と呼んでもいいのでは?。
連作短編という形式、好きであります。
ある話で主役だった人が、別の話でチョイ役で出てきたり、
同じ出来事を別の視点から見るとまた違って見えたりするのが面白いです。
さて最新作「カウントダウンノベルズ」
ある週の邦楽ヒットチャートの1位から10位までのアーティストをそれぞれ主人公に据えた、10の短編からなります。
トップを守る歌姫の苦しみとストレス(そりゃ登りつめたら後は降りていくしかないものなぁ)、
会社から契約解除を通告され泣く泣く解散するグループ(身につまされるものが・・・)、
ある新人アーティストがデビューするまでの経緯(出た豊島さん得意の「イタイ話」!)、など、
10の物語がつむがれます。
各話のリンクも自然です、完成度高い連作短編集だなあ〜。
これらは「才能」についての物語でもあります。
どの主人公も、ぎりぎりまで自分を追い込みながら「創る」ことにすべてを捧げます。凄いなあ。偉いなあ。
つぎからつぎへとリリースされ、消費されてゆくヒットチャートの音楽も、
当たり前ですが作り手たちは真剣かつ必死に作っているわけで。
そして豊島さんも、自らの才能を信じて物語を創り続けているわけで。
「書けなくなったらどうしよう」「全然売れなかったらどうしよう」「書評でけなされたら悲しいなあ」
と悩み苦しみながら、身を削るようにして(多分)書いているのが、透けて見えるよう。
音楽も文学も、創造する仕事というのは大変ですね。
私はものを創造する仕事ではないのですが、それなりに時間とストレスに追われる日々。
この短編集の「働く主人公たち」に共感いたしました。
今も仕事中に書いています(←どこが追われとるんじゃ!!)。
なお、実在のアーティストをモデルにしたと思われる話がいくつかあります。
私はJーPOPにはうといのですが、それでも最初の二話だけはわかりました。
(08.7.17.)