ゾラン・ジヴコヴィッチ:12人の蒐集家/ティーショップ(2005)
(山田順子・訳 東京創元社 2015)



Amazon.co.jp : 12人の蒐集家/ティーショップ (海外文学セレクション)


「よろけヴァイオリン」、「惚れ睡蓮」、「陽気な骸」、「詰めこみモンキー」・・・不思議な名前の菓子が並ぶケーキショップの主人が蒐集するのは客の「日々」。
明 け方に電話を掛けて他人の「夢」をチェックし、高額での買い取りを申し入れる男。
人を監禁して「希望」を譲れば解放すると主張する誘拐犯。
12人の謎のコレクターを描く連作に、喫茶室を舞台とした迷宮的物語「ティーショップ」を併録。
東欧のボルヘスと名高い著者が贈る奇妙な驚きに満ちた13の物語。


先日1年ぶりにチェロの弓毛を替えたので、こんどは弦の交換です。
弦は通販で買って、自分で替えます。
毎回チョー緊張します。
数年前、交換中に新品のA弦をぶちっと切ってしまった悲しい思い出があるので・・・(いま思い出しても泣ける)。

今回は幸い無事に交換できました、ホッ。
弾いてみるとやっぱり弓の滑りが良いです。
弾きやすいなあ、新しいっていいなあ。
気のせいか腕前も少し向上したような・・・(多分気のせいです)。

ところで楽器から外した古い弦を、ずっととってあります。
もう使うこともないのに、過去数年分の弦が全部、袋に入った状態でコレクションされてます。
意味は無いのはわかっていますが、なぜか捨てられません。
まあ、コレクションって、そういうものなのかも。

 ゾラン・ジヴコヴィッチ:12人の蒐集家/ティーショップ

本書に出てくる蒐集家たちも、何の意味があるのかわからないものを憑かれたように集め続けます。
自分の切った爪を年代順にコレクションしたり、詩集の「美しい言葉」をノートに書き集めたり、迷惑メールをきれいに分類して保存したり。
果ては「夢」だの「死」だの「希望」だの、わけのわからないものを収集するシュールなシュー集家も登場します。

著者のジフコヴィッチは1948年セルビア生まれ。
幻想的で不条理な作風から、「東欧のボルヘス」と呼ばれているそうです。
ちなみに私はボルヘスを読んだことがありません、エヘン!(←威張るな)

まあしかしボルヘスを読んだことが無くても充分に奇妙で面白い短編集です。
東欧のノリなのか、ジフコヴィッチの個性なのか、先が読めないストーリーによくわからないオチの、変な話が満載です。
普通のストーリーにちょっと飽きてきた、そんなアナタに向けた一冊。

連作の最後には「蒐集家が蒐集したものを蒐集する蒐集家」が登場(早口言葉じゃないよ)、
皮肉なのか不条理なのかファンタジーなのか・・・奇妙な味の結末が用意されています。
結局コレクションって虚しいものなのねと、CDや本がずらり並んだわが書斎(別名「魔窟」)で深いため息をつきました。
そういや以前娘に、「おとーさんが死んだら、このCDと本の山、どーするの?」と言われたなぁ。
まだしばらくは死なないつもりですけど・・・ね。

併録の「ティーショップ」は、2010年に出版された「ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語」にも収録されていた傑作。
旅行中の女性が、列車の待ち時間に入ったティーショップ。
メニューにはキャベツのお茶、ニンジンのお茶、風のお茶、雲のお茶、春のお茶など奇妙なお茶がずらり。
小説を好む彼女がオーダーしたのは『物語のお茶』、一口飲んだ途端、文字通り押し寄せてくる物語。
時間と空間を飛び越える突拍子もない展開、奇抜なラスト、素晴らしい。

(2015.12.19.)

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