殊能将之/キマイラの新しい城(講談社 2004年)




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<ストーリー>
 欧州の古城を移築したテーマパークの社長・江里陸夫に、城の領主の霊が取り憑いた?
 霊は、自分は城内の密室で何者かに殺害されたと主張、犯人を突きとめてもらいたいと訴えます。
 奇妙な依頼を受けた探偵・石動戯作(いするぎぎさく)は、中国人助手のアントニオとともにパークに乗り込みますが・・・



個人的偏愛ミステリ作家、殊能将之(しゅのうまさゆき)さんの待ちに待った新作「キマイラの新しい城」
文章がうまいです。 しかも読みやすい。 ややこしい設定も、すうっと頭に入ります。
しかし、妙な話を思いつくもの。 750年前の殺人事件を捜査する破目になった石動探偵、
中世騎士の霊に話を合わせるため、むりやり魔術師(錬金術師?)の扮装をさせられてしまいます。
(それにしても被害者自身が殺人事件の捜査を依頼するとは・・・冗談きつい)
石動戯作は今回も思い切り情けなく、助手のアントニオのほうが10倍くらいしっかりしているのは相変わらず。

「ハサミ男」はサイコもの、「美濃牛」は横溝正史へのオマージュ、「黒い仏」では伝奇ミステリと、
毎回趣向をこらしつつ、本格ミステリを解体・融解・変容へと導く 「ミステリ界の闇の魔導師・殊能将之」
あるいは「本格ミステリのちゃぶ台返し男」
今回のお題は「ヒロイック・ファンタジー」&「タイム・スリップ」です。

今回もミステリとしては確信犯的に「外して」いて、謎解き場面では思いっきり脱力させてくれますが、
これは殊能作品のお約束。 もうびっくりしないんだな、ボク。
持ち味であるディテールの書き込みはとてもていねいで、
中世十字軍の戦闘シーンなど、歴史小説かと思うほどの迫真の描写。
そうかと思えばテーマパークの重役の一人がカーマニア(ディクソン・カーです)だったために、
事件そっちのけでミステリ談義に花が咲いたり、
淫祠邪教の巣窟・ロポンギルズ(さてなんでしょう)で、中世騎士が大暴れしたり(カッコイイ!)、いやあ面白い。

タイムスリップものの常道ではありますが、中世騎士の目からみた現代社会の描写など、いちいち腑に落ちて笑えます。
最後まで誇り高い、騎士の霊の生き方(死んでるけど)に、ちょっとぐっときたりします。
むしろ、ミステリや密室の要素が邪魔になってくるほど。
ミステリと思わずに、遊び心に満ちたファンタジーとして読むのが正解か。
本格ミステリのファンでない人のほうが、楽しめるかもしれません。

(04.8.23.記)



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