ブクステフーデ/トリオ・ソナタ集 作品1&2
(ジョン・ホロウェイ:Vn ヤープ・テル・リンデン:Gamba ラース・ウルリク・モーテンセン:Chem)

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ディートリヒ・ブクステフーデ
(1637〜1707)は、若き日のバッハも崇拝したオルガンの名手であり、膨大なオルガン曲を残しました。
20歳のバッハが400kmの道のりをてくてく歩いてブクステフーデが住む町を訪れた話は有名です。
彼の演奏に圧倒されたバッハは短期間ながら弟子入り、ブクステフーデにも気に入られ、あやうく娘と結婚させられそうになりました。

ブクステフーデは晩年(1700年前後)に7曲入りのトリオ・ソナタ集を2巻出版しました (ほかに未出版のソナタが何曲かあります)。
「7曲」というのは、一週間の日数や太陽系の惑星の数にちなんでいると言われます。

私、バロック・ソナタが大好物でして、名のある作曲家のトリオ・ソナタといえば聴かないわけにはいきません。
でもまあオルガニストの余技ですからね〜、そんなに大した曲じゃないんだろな〜
と思いながら聴いてみると・・・

 ソナタ作品1の3より アレグロ
 

・・・とってもいいじゃあありましぇんかー!

じつは、若い頃からこつこつ書き溜めていたソナタを晩年に厳選、さらに手を入れて「蔵出し」したんだそうで、
本人にとってもかなりの自信作だったことがうかがえます。

楽器編成はヴァイオリンヴィオラ・ダ・ガンバ、そして通奏低音(チェンバロ)
ヴァイオリンとガンバは対等に響きあい、繊細で立体的な対位法を織りなします。
ブクステフーデさん、オルガンだけじゃなく弦楽器の扱いにも長けていたんですね。

 ソナタ作品1の4より ヴィヴァーチェ〜アレグロ (ヴァイオリンの楽しげな歌に、ガンバの応答が続き、その後親密な対話が繰り広げられます)
 

巧みな対位法で構成されている一方、形式的にはとっても自由で、楽章内で頻繁にテンポが変わります。
途中でテンポが変わる楽章が多いのがブクステフーデのソナタの特徴、即興的でラプソディックな印象を与えます。

 ソナタ作品1の7より ポコ・プレスト〜レント〜プレスティッシモ (楽し気でせわしないポコ・プレストが突然レントになり、またひそやかで急速なプレスティッシモに!)
 

ヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバが対等に二重奏を展開するのはなかなか新鮮。
ヴィオラ・ダ・ガンバが一歩下がって伴奏的役割になることが多いですからね。
オルガニストだけあって多くの楽章がフーガとなっていますが、難解さはかけらもなく、ただただ楽しいです。

 ソナタ作品2の1より ヴィヴァーチェ〜レント (素敵な二重奏! 最後で突然レントになります)
 

ヴィオラ・ダ・ガンバがソロを取る楽章もあります。 沁みるなあ。

 ソナタ作品2の5より アダージョ (ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソロによる)
 

そうかと思えばヴァイオリンがひたすら歌い、ヴィオラ・ダ・ガンバは伴奏に徹する楽章も。

 ソナタ作品2の2より アリエッタ (主題と9つの変奏で構成される、流れるように美しい楽章)
 


頻繁なテンポの変化、フーガの多用などにオルガニストらしい個性が光る、素晴らしいソナタ集です。
ディートリヒ・ブクステフーデ、大作曲家です! あんた凄いよ、気に入った!(←何様じゃ)
バッハが崇拝したのもうなづけます。

(2025.07.19.)

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