Gino 0808/雪女と蟹を食う(全8巻)
(講談社 2019〜21)
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連載中から楽しみに読んできたマンガが遂に完結!
Gino 0808/雪女と蟹を食う
変わった著者名ですが「ギノ ゼロハチゼロハチ」と読むそうで、どうやらうら若き女性のようです。
タイトルも負けないくらい変わっていて、「なんだこれは?」と思わせるところがニクイですね。
著者は連載開始時にツイッターで「犯罪者とセレブ人妻の逃避行不倫グルメお色気漫画です!(←詰め込み過ぎ)」と紹介していて、
出だしは確かにそんな感じです。
第1話試し読み
しかし徐々に先の読めないストーリーに絡めとられ、ページをめくる手が止まらなくなること請け合い。
見ず知らずの男と突如逃避行を始めるヒロインは何を考えているのか、どんな目的があるのか?
全編にわたって濃厚なエロスが匂い立ちますが、同時にタナトス(死)も影のように寄り添います。
そもそも冒頭からして男が首つり自殺を試みるシーンなのです(失敗するけど)。
「エロスはタナトスで、タナトスはエロスだ」 「やっぱりエロスを追求するとタナトスになるんだよな」(荒木経惟)といった言葉が思い浮かび、
甘く危険な誘惑にページをめくる手が止まらなくなること請け合い。
ともに心に闇を抱えた男女の旅路、しかし暗いばかりではありません。
名古屋から出発し北海道を目指すドライブ中、各地でグルメや高級旅館や温泉などを満喫し、あんなこともこんなこともしちゃいます、コノヤロー!
いっぽう随所に文学的な香りも漂い、太宰治「斜陽」や宮沢賢治「銀河鉄道の夜」が引用されます。
とくに「銀河鉄道の夜」は終盤で大きな役割を果たし、ほぼオマージュと言えます。
7巻あたりでようやく物語の全体像が見えてきて、ヒロインの過去や思惑も明らかになりますが、そうなると今度は
「最後はどこに着地するんだろう?」
ということが気になって、ページをめくる手が止まらなくなること請け合い。
ご心配なく最後は大団円です、救済と浄化の物語へと昇華します。
なお最終巻にはもはやエロシーンはまったく出てきません。
美しい物語でした。
読後感爽やか、最後まで読んでよかったと思えた作品です。
単行本ラストには著者のあとがきがあり(これがまた味わい深い)、意気込みの強さ、思い入れの深さが感じられます。
心して味わいましょう。
ちなみに私は今夜は「古女房と鍋を食う」予定です。
(2021.03.07.)
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