パトリック・レドモンド/霊応ゲーム(1999)
Patrick Redmond/The Wishing Game
(広瀬順弘・訳 ハヤカワ文庫 2015)



Amazon.co.jp : 霊応ゲーム


イギリスの全寮制パブリック・スクールで学ぶ14歳の少年ジョナサンは、同級生ばかりか教師にまでいじめられる辛い日々を送っていた。
そんな彼に新しい友人ができた。
クラスで一目置かれる一匹狼の秀才・リチャードだ。
やがてジョナサンをいじめる悪童グループが一人、また一人と不可解な事件や事故に巻き込まれ、
さらに教師たちも奇怪な事件の犠牲になってゆく・・・。
少年たちの歪んだ心を巧みに描いた幻の傑作!


きみに手出しをしようなんてやつは、だれもいないさ。
そんなことするやつはだれだって、このぼくが殺してやるからな。



2000年に早川書房から邦訳(ハードカヴァー)が出版されたもののすぐに絶版となった本書。
「幻の傑作」の呼び声高く、一時はマーケットプレイスで2万円の値がついていたとか。
「復刊ドットコム」で絶大な支持を集め、このたびめでたく文庫で復刊しました。

 パトリック・レドモンド/霊応ゲーム

舞台となるのは1950年代英国の名門全寮制パブリック・スクール。
萩尾望都「トーマの心臓」「小鳥の巣(ポーの一族)」みたいな雰囲気(あっちはドイツだけど)。
というかクリソツです。
パトリック・レドモンド、日本の古い少女マンガとか読んでませんよね、まさか?

現代(1999年)から、40年以上前に寄宿学校で起こった忌まわしい事件を振り返る形式で語られます。
のっけからたちこめる不穏な空気。
読書好きのおとなしいいじめられっ子ジョナサン・パーマーは、
妖しい美貌をもつ超然とした同級生リチャード・ロークビーと、ひょんなことから親しくなります。

二人が友情を深め、ジョナサンをいじめる連中に立ち向かってゆくあたりまでは素直に「イイハナシダナー」なんです。
しかし夏休みに訪れたリチャードの実家で、ふたりは古い「ウィッシング・ゲーム・ボード」(ウィジャ盤)を見つけます。
日本でいうところの「コックリさん」ですが、降霊術がさかんだったイギリスにはちゃんと市販の盤があるんですね。
新学期が始まると、次第にリチャードの行動が常軌を逸し、ジョナサンに対する独占欲をあらわにしはじめます。

後半の緊迫感、すごいっす。
ひさしぶりにぺージをめくるのがもどかしい気持ちを味わいました。
クライマックスではすべてが崩壊します、救いはありません。

サスペンスであり、ゴシック・ホラーであり、少年小説であり、BL要素ありと、多面的な魅力を持ちますが、
とにかくキャラクター造形が巧みです。
脇役に至るまでしっかり作りこまれ、共感・感情移入させられるだけに、悲劇的なラストの後味の悪さが尾を引きます。
「ウィッシング・ゲーム」で何が起こったのかがほのめかされる程度なのも謎めいた効果を挙げています。

超バッドエンドなんですが、つい引き込まれてしまう傑作小説でした。
読んでおののいてください。
それにしても、全寮制パブリックスクールという密閉された濃密な空間、怖すぎます!

(2015.09.19.)

「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ