リック・ウェイクマン/ヘンリー八世の六人の妻
(1973)



Amazon.co.jp : Six Wives of Henry VIII

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<曲目>
アラゴンのキャサリン
クレーヴのアン
キャサリン・ハワード
ジェーン・シーモア
アン・ブーリン
キャサリン・パー


昔々の1970年代のこと。
夜7時台のNHK-FMに、「サウンド・オブ・ポップス」という番組がありました。
洋楽のアルバムを、原則として一枚まるまる放送するという、手抜きのようですが非常にありがたい番組でした。

愛読していた雑誌「FM fan」で放送予定を確認し、気になるアルバムが放送される日はラインマーカーで印をつけ、
夕食もそこそこにラジカセの前に端座して、カセットテープに録音しました。
考えてみれば私の洋楽に関する知識のかなりの部分は、この番組のおかげです。
(なので番組が終わってからはほとんど更新されていません・・・)

リック・ウェイクマン「ヘンリー八世の六人の妻」も、この番組でエアチェックしました。

ヘンリー八世は、言わずと知れたイギリスの王様です。
6回も結婚しましたが、2回離婚し3回死別、死別といってもそのうち2人は自ら命令して処刑させたから怖い。

たとえば2番目の妻、アン・ブーリンは、エリザベス女王を産みましたが、不義の疑いで処刑されました。
おそらくは濡れ衣で、ジェーン・シーモア(アン・ブーリンの侍女だった)に気持ちが移ったヘンリー八世が彼女と結婚するために仕組んだようです。 
アンとその一族に専横のきらいもあったようですが、それにしても・・・オソロシや。

最後の妻キャサリン・パーは、ヘンリー八世を看取り、のちに再婚しました。


さて、「ヘンリー八世の六人の妻」は、その名のとおり6曲からなる組曲で、全編インストルメンタル、歌は入りません。
王立音楽院でピアノを専攻していた(のちに中退)ウェイクマンだけあって、プログレッシヴ・ロックとはいえ大変クラシカルな雰囲気です。
多彩でありながら、全体として見事なまとまりを感じさせる傑作。
なお曲順は結婚順にはなっていません。

1曲目「アラゴンのキャサリン」 序曲的ナンバー。
軽快・不穏・平穏・浪漫、猫の目のように変化する曲調は、むしろヘンリー八世の複雑な性格を表現しているような気も。
アラゴンのキャサリンは最初の妻。
のちのメアリー女王を産みますが、王子を望んでいたヘンリー八世によって離婚されてしまいます。
 

2曲目「クレーヴのアン」のノリの良さ。 この曲いちばん好きです。
変拍子でジャジー&ファンキーに盛り上がります。
ライン地方出身の彼女は4番目の妻で、わずか数週間で離婚されてしまったそう。
事前に送った肖像画と似ても似つかない外見だったことが原因とも言われますが・・・。
結婚期間はもっとも短いのに、なぜか曲は一番長いです。
 

3曲目「キャサリン・ハワード」は、ピアノが活躍しクラシカルに始まり、途中からホンキイ・トンク風に。
5番目の妻だった陽気な浮気娘キャサリンを表現したのでしょうか。
彼女もアン・ブーリンと同じく不義密通の罪で処刑されました(こちらは濡れ衣ではなかったよう)
なぜかビゼー「アルルの女」のファランドールが引用されます。

4曲目「ジェーン・シーモア」は3番目の妻。
パイプ・オルガンとムーグ・シンセサイザーの珍しい競演が聴きもの。
エドワード王子を産んで、ヘンリーを狂喜させましたが、産後の肥立ちが悪く数週間で亡くなってしまいました。

5曲目「アン・ブーリン」、哀愁を帯びたピアノのメロディで始まり、
シンセサイザー、コーラスも動員しながら多彩に展開し、最後はしめやかに終わるスケールの大きな曲。
彼女の数奇な運命を表現しているようです。
 

6曲目「キャサリン・パー」(キャサリン多いな)は最後の妻。
知性と教養にあふれる女性で、王の最期を看取り、エリザベスやエドワードにもやさしく接しました。
それにしては賑やかで忙しい曲ですが、ドラマティックに盛り上がって全曲を閉じます。
キーボード・ロックの名盤として、いま聴いてもじつに聴き応えあります。

それにしても6人の妻とは! 凄いですね。 私なんかひとりでも持て余・・・(以下自己規制)。

(10.7.16.)


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