高橋アキ/季節はずれのヴァレンタイン
(1976)



Tower@jp : 季節はずれのヴァレンタイン/高橋アキ

<曲目>
クセナキス/エヴリアリ
武満徹/フォー・アウェイ
ケージ/季節はずれのヴァレンタイン
ケージ/ア・ルーム
ケージ/マルセル・デュシャンのための音楽
サティ/グノシェンヌ(全6曲)
ドビュッシー/前奏曲集第2巻より(3曲)


現代音楽を得意とするピアニスト高橋アキ初期のアルバム。
30年も前のアルバムと甘く見たら大間違い、
洒落た選曲、シャープな演奏、素敵なタイトル、美麗なジャケット(LPは迫力あったな)
いまでも立派に通用します。

20世紀に作曲されたピアノ曲から選曲、(ほぼ)新しい曲から古い曲へと並べています。

「エヴリアリ」(1973)は、クセナキスの作品の中では比較的親しみやすい曲。
といっても、しっかりドガチャガしております。
超複雑なリズム、渦を巻く音響、噴出するマグマのようなエネルギーを理屈ぬきで楽しむべし。
弾くほうはさぞ大変でしょうけど。 
ま、ミスタッチされても私は気付かない自信ありますが・・・(もちろん高橋さんは完璧に弾いてます!)

 


武満徹「フォー・アウェイ」(1973)は、対照的に静謐な音世界。
水面に広がる波紋を音にしたような、繊細微妙な音楽です。

 (このCDの録音ではありません)

この2曲はともに、ふたりの作曲家がいっしょにバリ島を訪れた時に着想されたそうですが、「わざとかい!」と言いたくなるほど対照的なのが面白いです。

ケージ「季節はずれのヴァレンタイン」(1944)
いやあ、いいタイトルです。 コピーライターの才能ありますケージさん。
これは妻ゼニアに捧げられたプリペアド・ピアノのための曲。
どんなにロマンティックかと思ったら、えらくすっとぼけた開始で肩透かし感充満。
こういう外しかたがケージなのか。 後半はガムランぽくて、前の2曲とさりげなく関連性を。
プリペアド・ピアノは、ピアノの弦にボルトや硬貨や消しゴムをはさんで、音色を変えたピアノ。
勝手にはさんで良いわけではなくて、曲によってどの弦に何を挟むかきちんと指定されています。
演奏より、準備のほうが大変かも・・・。

 (このCDの演奏ではありません)


続くケージ「ア・ルーム」「マルセル・デュシャンのための音楽」も、プリペアド・ピアノのための曲。
後者は琴のような東洋風の旋律が面白いなあ。

 マルセル・デュシャンのための音楽
 (このCDの演奏ではありません)

「グノシェンヌ」は、サティの作品中でも屈指の人気曲。
ゆっくりと執拗に繰り返されるリズムの上を、異国風のしなやかなメロディが舞う、小さな6つの異世界。
私もサティでは、「グノシェンヌ」が一番好きですね。
高橋さんは、日本にサティを紹介した先駆者の一人、
深みのある柔らかな音で語りかけるような貫禄の名演奏でございます。

 

最後にドビュッシーの前奏曲集第2巻から「霧」「風変わりなラヴィーヌ将軍」「月の光がふりそそぐテラス」
繊細な揺らぎをデザートのように味わいながら、アルバムは閉じられます。


(07.7.14.)

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