ジョージ・R・R・マーティン/タフの方舟
(酒井昭伸・訳 ハヤカワ文庫 2005年)



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ようこそ「方舟」に!
手前が、この舟の船長にしてただ一人のクルー、ハヴィランド・タフでございます。
全長30キロメートルの巨大舟にただひとりかと? さようでございます。
もちろん、わが最愛の猫たちをのぞいての話でございますが・・・
彼らは宇宙船の操縦などという卑しい仕事にはとんと興味を示しませぬので、やむなく手前ひとりで動かしております次第。
手前、身長2メートル半、禿頭に太鼓腹というご覧のとおりの外見ではありますが、
いたって気の弱い小心者でございます。 よろしくお見知りおきを。

さて「方舟」という呼び名の由来でございますが、
当船はかつての連邦帝国が生んだ「胚種船」の唯一の「生き残り」でございまして、
全銀河ありとあらゆる生物の細胞ライブラリーを保有しております。
ヴィルカキスの襟巻きドラキュラ、ジェイドンUの歩く蜘蛛の巣、ナモールの壷牡蠣、何でも取り揃えてございます。
さらに、異種交配、遺伝子組み換えなどを行えば、いまだ存在していない動植物でも、自在に大量生産が可能でございまして・・・
え、そのようなことはすでにご存知でいらっしゃる?
これはこれは、お客様の知識の深さには、手前のような浅学薄才の輩、ただただ敬服いたすばかり。

手前、たまたま手に入れましたこの「方舟」を、少しでも皆様のお役に立てたいと念じまして、環境エンジニアとして銀河をまわっております。
食糧問題にお悩みの惑星があれば、収穫率の良い作物をご提供し、害獣・害虫に荒らされてお困りの向きには、天敵を作り出して散布いたします。
もちろん貴星の生態系に与える影響は最小限にとどめましてございます。
料金のほうも精一杯勉強させていただきますので、よろしくご贔屓のほどを。

え? あこぎ? 手前が宇宙一あこぎな商人と呼ばれていると??
ああ、なんという嘆かわしいお言葉でしょう。 手前は皆様の幸せのために日夜粉骨砕身しておりますのに・・・。
ただ、この巨大な方舟を維持管理するには莫大な費用がかかること、賢明なお客様にはご理解いただけるはず。
手前の請求額はあくまでも、あくまでも必要経費の範囲内なのでございます。
また、手前は動物を心から愛しておりまして・・・。
手前が厳格なヴェジタリアンであること、すでにお聞きおよびかと存じます。
したがって、必要もなく動物を虐待なさるようなお客様に対しては、やや厳しい対応をとらせていただいた場合もございましたなぁ・・・。
しかし手前のモットーは、一に正直・二に真っ当でございます。
上掲ハヤカワ文庫の2冊をお読みいただければ、そのことはとくとご納得いただけると信じております。
はい、手前の本は、この2冊のみなのでございます。 残念至極なことで。
著者ジョージ・R・R・マーティンは気が向けば手前の物語をまた書いてもよいと申しておるようですが、無理でしょうなあ。
「七王国の玉座・氷と炎の歌」シリーズのほうが忙しすぎるようでございますよ。。。

それでは、手前はそろそろ失礼いたします。
これから、人口爆発に悩む惑星、ス=ウスラムへ向かわねばなりませんので。

(05.6.7.記)

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