カミッロ・トーニ/ピアノ作品全集 第1巻
(アルド・オルヴィエト:ピアノ)



Amazon.co.jp : Togni/Complete Piano Music Vol. 1

Tower@jp : Togni/Complete Piano Music Vol.1


マーラーのアダージェット、ピアノ独奏版


ルキノ・ヴィスコンティ監督の名作映画「ヴェニスに死す」(1971)。
ヴァカンスでヴェニスを訪れた初老の音楽家が、同じホテルに泊まっている美少年に魅了され、
ひとり悶々としたあげくに死んでしまうという、熟女好きな私には理解不能なストーリーでした。

 「ヴェニスに死す」Trailer
 Death in Venice

しかし映像は極めて美しい。
それものんべんだらりと美しいのではなく、ときに醜悪を織り交ぜることで、いっそう美しさを際立たせるハイ・テクニック
(主人公が老いを隠そうと白粉と紅を塗った姿の醜さ!)。
高度な芸術ビームがビンビン放射され、思わず眠りこけてしまうほどです。

この映画で印象的に使われていたのが、マーラー:交響曲第5番・第4楽章「アダージェット」
「ヴェニスに死す」ではじめてマーラーの音楽に触れた人も多かったはず(私がそう)。

さて何年か前にDVDを購入し、あらためて鑑賞すると気づいたことが。
映画には原曲のヴァージョンのほかに、ピアノ独奏ヴァージョンも登場するのです。

 「ヴェニスに死す」より「アダージェット(ピアノ独奏による)」
 

このピアノ・ヴァージョンがなかなかに綺麗。
音源ないかなあと、折に触れて探していたのですが、見つかりませんでした(サントラも廃盤)。
ところが、そんなこともトーニ忘れたつい最近、トーニという作曲家による編曲がナクソスから出ているという情報をゲット。
「ヴェニスに死す」に使用された編曲とは違うようですが、とりあえず手に入れました。

 

カミッロ・トーニ Camillo Togni(1922〜1993)はイタリアの作曲家で、主に十二音音楽を作曲したバリバリのゲンダイオンガクの人。
この編曲はもちろん現代音楽ではないですが、さすがは作曲家、独立したピアノ作品であることを主張しているかのよう。
原曲のスコアから大胆に音を減らした点描風の響き、メロディ・ラインだけの部分もあります。
かと思えば勝手に音をオクターヴ上げたり下げたり、原曲にない音を加えたりもして、かなりひねっています。
あの優雅で流麗なアダージェットが、なにやらエキセントリックで芝居がかった独白のように聞こえる、個性的な編曲。

聴く人により好みは分かれそうですが、面白いことは面白いです。

(2015.5.12.)

「音楽の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ