アート・テイタム・インプロヴィゼイションズ
Art Tatum Improvisations
(Steven Mayer , piano)
(NAXOS 8.559130)
Amazon.co.jp : Art Tatum: Improvisations
ジャズのクラシック化?
アート・テイタム(1909〜1956)は、驚異的なテクニックを誇ったという天才ジャズ・ピアニスト。
ウラディミール・ホロヴィッツも、テイタムには一目置いていて、お忍びで聴きに行ったりしたとか。
なんで「お忍び」なのかわかりませんが。
このCDは、採譜したテイタムのピアノ・ソロを、クラシックのピアニストが弾きなおしたもの。 再現CDとでも言いましょうか。
鍵盤上を駆け巡る、きらめく高速パッセージの数々、よくもまあアドリブでこんな演奏ができますねえ。
ところでジャズのアドリブを正確に再現するのって、大変なのでしょうか?
現代のクラシック・ピアニストにとってはそれほどでもないのかな。
いや根本的に奏法が違うからやっぱり難しい? そのへん、どうなのでしょう。
さて、このディスク、よく考えると、けっこう大きな問題を提示しているような気が。
例えば、バド・パウエルの「クレオパトラの夢」やビル・エヴァンズ・トリオの「枯葉」を、
現代の演奏家が完璧にコピーして聴かせたら、それはクラシック音楽のように再現芸術として認められるでしょうか。
あるいは、キース・ジャレットの「The Koln Concert」を、そっくりそのまま演奏会で弾くとか(楽譜は発売されています)。
そんなことあんなことを考えながら聴くと、とても興味深い一枚であるわけですが、
別になーんにも考えずに聴いても、お洒落なジャズ・ピアノ・アルバムとして、なかなかのものかも。
どの曲もゴージャスでポジティヴでハッピー、ひねくれたところは全然なくて、
テクニックを存分にひけらかし、「どうだすごいだろ」と真正面から大見得を切ってるところがかえって好感度。
テイタムのオリジナル・ヴァージョンをよく知らない私が言うのも何ですが、
まあ、こんな感じで気楽に聴くのが案外正解ではないかと。
Art Tatum : Elegy
Steven Mayer : Elegy
(06.6.10.)