映画「タンポポ」
(1985)




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「うどん王国」 「うどん県」 と言われる、讃岐の国香川県に暮らして、もうすぐ18年。
正直こんなに長くなるとは思いませんでした。

越してきて驚いたのは、県民の主食が本当にうどんであること。
「朝食は毎日うどん」という人がたくさんいるし(朝からやってる店が多い)、みなさん真面目な顔で「うどんは別腹」とか言うし、
「揚げぴっぴ」という、リンドグレーンの童話みたいな名前の、うどんを油で揚げた菓子もあります (「ぴっぴ」とはうどんの幼児語らしいです)。

しかも安くて美味い。
1杯100円程度で食べられる店があっちにもこっちにもあるので、
かつて香川県は「マクドナルド不毛の地」と呼ばれた時期もあるそうです(最近はそうでもない)

とにかくうどんに関しては、美味しい店、面白い店、怪しい店、いろいろあって、
「うどん店めぐりツアー」など、楽しく遊べる「うどん文化」が花盛り、大変結構なのですが、その割りを食っていると思われるのが「ラーメン」です。

ラーメン屋、他県に比べて少ない気がします。
探せば美味しい店はありますが、「ラーメン食べたい」と思った時の選択肢が限られるのです。
ちょっと寂しい・・・。

 なお、そばに至ってはほとんど絶滅危惧種扱い

で、でも、住みやすくていいところですよ〜。

さて話は唐突に変わって、伊丹十三、今年(2012)は没後15年だそうです。
70年代にはこの人のエッセイに読みふけり、80年代にはこの人の映画に熱中した者として、

 
「ちょうどいい、HPで取り上げるとしよう、最近ネタも不足してることだしな!」

と、敢然と立ち上がった私であります(←どこが敢然じゃ)

さて、伊丹映画で一番好きなのはなんといっても「タンポポ」(1985)。
公開時に観て感激し、レーザーディスクで買い、DVDも買いました。
いまでも観るたびに、お腹が鳴ります。

 米国版・予告編
 

 未亡人タンポポが経営するさびれたラーメン屋にふと立ち寄ったタンクローリーの運転手ゴロー。
 この店を「本当のラーメン屋」にするため手を貸してほしいと頼まれたゴローは、
 仲間たちに助けられながらついに「究極のラーメン」を完成、満足の笑みを浮かべていずこへともなく去ってゆく・・・・・・。


というストーリーを縦軸に、さまざまな「食」に関するエピソードが挿入される構成。
徹頭徹尾、猪突猛進、粉骨砕身、首尾一貫「食」に食らいつき、「食」を描き切った映画です。
エピソードのほうが本筋より面白いほどで、とくに役所広司黒田福美「生卵のシーン」は、映画史に残るものでは。
「生理的に受けつけない」という人も多い問題シーンですが、はじめて観た時にはあまりのインパクトに言葉を失いました。
しばらく生卵が食べられなくなったほどです (←自分も受けつけてない)

 「タンポポ」より「生卵のシーン」
 

「生牡蠣のシーン」の妖しいエロスも忘れ難いし、
 

「最後のチャーハン」は、それだけで短編映画のような完成度。
 

「オムライス」にいたっては思わず「食わせろ!」と叫びそうになります。
 

随所に「生と死」が見え隠れするのもこの映画の特徴。
ラーメンのダシにする豚の頭や鶏をしっかり映すのは、「食べることは生き物の命を奪うことでもある」のを忘れないためでしょうか。
スッポンを締めるシーンもあります。
役所広司は死に際にも食べ物の話をするし、エンドロールは一心不乱に母乳を飲む赤ちゃんの姿。

 食べて生きるとは、美しく偉大で素晴らしいことなのですね!

音楽はクラシックのオーケストラ曲を使用、リスト「前奏曲」や、マーラーの交響曲が、ラーメン丼の中で壮大に共鳴します。
観ると腹が減る不滅の傑作映画、観覧後の大食い注意であります!


(2012.2.15.)


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