中村文則「掏摸(スリ)」「王国」
(2009、2011)

Amazon.co.jp : 掏摸(スリ) Amazon.co.jp : 王国
Amazon.co.jp : 掏摸(スリ) (文庫)

<ストーリー>

「掏摸(スリ)」
スリ師は「最悪」の男と再会した。男の名は木崎。かつて一度だけ仕事をともにした、闇の世界を生きる男。
「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前が死ぬ。逃げれば、あの子供が死ぬ……」
運命とはなにか。そして他人の人生を支配するとはどういうことなのか。

「王国」
利用価値のある社会的要人の弱みを人工的に作ること、それが鹿島ユリカの「仕事」。
不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から静かに語りかける男の声。
「世界はこれから面白くなる。あなたを派遣した組織の人間に、そう伝えておくがいい。そのホテルから、無事に出られればの話だが」
圧倒的に輝く強力な「黒」がユリカを照らし出す。 逃亡劇が始まった。


平日はそれなりにきちんと働いている私ですが、しかしと言うかだからと言うか、土日は全力で積極的にグテーッとします。
まあ、グテーッとしながらもチェロの練習したり、レッスンに出かけたり、ジムに泳ぎに行ったりはするのですが、
大半はソファやベッドや床に寝っ転がって、本を読んだり音楽を聴いたり。
ニョウボに邪魔にされ、「なんで主婦は土曜も日曜もご飯作らないといけないのかなぁ、ふぅ」と言われながら、
必死で力いっぱいグータラするべく、毎週努力の限りを尽くしています。


そんな最近の日曜日に寝っ転がって読んだ、中村文則の二部作

 「掏摸(スリ)」 「王国」

大変よかったです。


何が良いって、薄くて短いこと!
寝っ転がって読んでも腕が疲れません!
一日で二冊とも読めちゃいます!

ただし、物理的には薄くて軽いですが、内容は重厚で密度の濃い小説です。

「悪とはなにか、そして善とは」を追求し続けている最近の中村文則
邪悪で巨大な奔流に巻き込まれたちっぽけな人間の抵抗を、一切の無駄を削ぎ落とした文章で描く正統派ハードボイルド・サスペンス。
芥川賞作家だけあって、文学的・哲学的な香りが全編に立ち込めているのも魅力的。
主人公視点で書かれており、彼らが巻き込まれる「悪」の全貌が最後まで見えないことも緊迫の度合いを高めます。
彼らは生きて組織の手を逃れることができるのでしょうか?

こういう小説はストレスのかかる状況で読んではいけません。
休日の昼下がり、ステテコ姿でビール片手に、完全にリラックスした安全な状態で読みましょう(でないと怖くなる)
それでも急に電話が鳴ると、ビクッと飛び上がったりして。
いまここに組織から派遣された敵が3人侵入してきたら、どこから逃げてどこに身を隠すべきか。
などと激しく妄想しながら読み終えた自意識過剰な私。


さあ、明日からまた仕事です。
私の仕事には「謎の組織」はたぶん絡んでこないので良かったな〜(←阿呆か)。

(2013.6.16.)

「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ