ファリャ/スペインの庭の夜
アルベニス/幻想的ピアノ協奏曲 ほか
(ピアノと管弦楽のための近代スペイン作品集)
ジャン・フランソワ・エッセール独奏、ロペス=コボス指揮
ローザンヌ室内管弦楽団
(ワーナー WPCS 11276、国内盤)



Amazon.co.jp : Falla; Albeniz; Turina: Works for Piano and Orchestra


この値段でこの選曲の妙が楽しめる!


クラシックのCDって、最近ずいぶん安くなっていて、国内盤でも、1枚1000円のシリーズが各社から出ています。
しかも、マニア向きのシブ〜い作品まで並んでいて、リリース情報からは目が離せません。

02年4月に、ワーナー・クラシックスから出た、「エイペクス・コレクション」という1000円シリーズ。
ヨソではなかなか聴けない珍しい作品ぞろいですが、それでもこの1枚など、にぎやか&華やかで、誰でも楽しめると思います。

近代スペインの3人の作曲家の、ピアノと管弦楽のための作品をおさめています。
内容は、以下の4作品。
ファリャ(1876〜1946)/交響的印象「スペインの庭の夜」(1914)
アルベニス(1860〜1909)/スペイン狂詩曲(1888)、幻想的ピアノ協奏曲(1889)
トゥーリナ(1882〜1949)/交響的狂詩曲(1931)

(1996年のデジタル録音です)

ファリャ「スペインの庭の夜」、大好きな曲です。超名曲です。
雰囲気のあるタイトルからして素晴らしい。
実質的には3楽章からなるピアノ協奏曲ですが、「ピアノ協奏曲第○番」などど言われるより、イメージわきます。
ドビュッシー風な移ろう響きと、情熱のリズム&メロディが織りなす魅惑のタペストリー。
いつ聴いても素敵だな〜。
この曲には、マルタ・アルゲリッチ盤、アリシア・デ・ラローチャ盤など、情熱あふれる、あつ〜い名盤がいろいろあります。
それらにくらべるとこの演奏は端整というか、淡白というか、見事なテクニックで弾いているんですが、全体的に薄味な印象。
「今年のスペインちょっと冷夏です」って感じかな。
でもこういうクールな演奏も、面白いかもです。

ちなみにこちらはかなり熱い演奏。
      ↓
 

あとの3曲はかなり珍しいレパートリー。
アルベニスの「スペイン狂詩曲」は、名前のとおりエキゾティックなスペイン情緒あふれる曲。

アルベニス「幻想的ピアノ協奏曲」は、狂詩曲ほどスペイン情緒は濃くないですが、この作曲家のメロディ・センスの良さが大爆発の超絶美麗音楽です。
アルベニスがこんな本格的なピアノ協奏曲を残していたとは知りませんでした。
ピアノも軽やかに華やかに活躍し、最高にロマンティックでお洒落な音楽に仕上がっています。
まあ、深遠さとは無縁の、一種のムード音楽ですが、ここまで綺麗で洗練されているとほとんど鬼気迫るものがありますね。
もっと広く聴かれて欲しいなあ。

 

最後のトゥーリナ「交響的狂詩曲」は、8分あまりの短い曲。
これもあまりスペイン情緒は感じられません。
よくできたピアノ小協奏曲という感じの、親しみやすいメロディの作品。
「狂詩曲」というからには、もう少し狂って欲しいところですが、映画音楽風に綺麗に盛り上がって終わります。
洗練されたオーケストレーションがさわやかです。

この価格でこの選曲、この演奏、この録音、絶対にお買い得でしょう!
初夏の夜に、ワインでも飲みながら聴くのに良い一枚であります(もちろんビールでもOK)。

(02.5.19.記)     

「音楽の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ