石黒正数/それでも町は廻っている(2005〜2017、全16巻)



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祝・第四十九回 星雲賞コミック部門受賞(2018年)!


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石黒正数「それでも町は廻っている」が、2018年の第49回 星雲賞コミック部門を受賞しました!

 え、「星雲賞」ってなんだって?

前年度に発表または完結した優れたSF作品に与えられる賞で、日本SF大会参加登録者のファン投票で選ばれます。
「日本SF大賞」と並ぶ、SF界の権威ある賞ですが、一般に知られていないことと言ったらじつに清々しいほど。
「芥川賞」「直木賞」「本屋大賞」と違ってニュースにもなりません。

 なお2017年のコミック部門受賞作は秋本治「こちら葛飾区亀有公園前派出所」でした(←え、SF???)。

「それでも町は廻っている」は、東京の下町で暮らす元気な女子高生・嵐山歩鳥を中心に、日常の出来事を描くコメディータッチの作品。
これまた基本的にはSFではありません。
むしろ「こち亀」の女子高生版かい! と突っ込みたくなりますが、
エピソードの中にはSF風の作品や、宇宙人・幽霊・死後の世界といった超常的な存在を扱ったもの、事件を推理・解決するミステリ的なエピソードがあります。
コメディだけじゃなく、ラブロマンスあり、シリアス話あり、人情話あり、ホラー話あり、ホラ話あり、雑多で多彩な面白さがあります。
遊びのある伏線が多く散りばめられていたり、過去のミステリ・SF・文学作品へのさりげないオマージュが散見されるのも魅力。
大人の鑑賞にも耐えうる、「こち亀」に負けない傑作コミックだと思います (ただし巻数は十数分の一、知名度は数十分の一です)。

全16巻・130話で主人公の高校生活3年間を描きます。
なお時系列は意図的にシャッフルされていて、あとから時系列順に読み返すと、
「これってこういうことだったのか〜!」と、全く印象が違ったりするのがじつにマジカル。
たとえば、第128話「嵐と共に去りぬ」(第16巻)を読んでから、第111話「夢幻小説」(第14巻)を読むと・・・、あーそういうことかっ!!

作品中にちりばめられたヒントを拾い集めて行けば時系列はだいたいわかるので、「読者への挑戦」と思って「謎解き」にいそしむのも一興ですが、
連載終了後に出た「それでも町は廻っている 公式ガイドブック 回覧板」を読めば、全部書いてあります。
非常に丁寧に書かれたガイドブックであり、単行本未収録の話も入っていて読み応えたっぷり。
作者が考え抜いて、伏線張りまくって描いていることがよくわかって感動ものです。

 

時系列順に読み直して考察を加えている人のブログもたくさんある、マニア心をくすぐる名作です。

星雲賞受賞を記念して、最初から読み返してみようと思います。

 

(2018.07.28.)

「良い思い出は・・・その・・・その人を良い人にするんだよ! そうすっと良い人は良い人と出会って良い事が起きるんだ」
(第14巻35ページ)




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