スタニスワフ・レム/ソラリス(1961)
(沼野充義・訳 ハヤカワ文庫 2015)



Amazon.co.jp : ソラリス (ハヤカワ文庫SF)

惑星ソラリス、この星は「生きた海」に表面を覆われている。
ソラリス探査ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは、
荒れ果てた研究室と、恐怖にやつれた研究員たちを目にする。
そしてケルヴィンの前に10年前に自殺した恋人ハリーが出現する。
ソラリスの海、それは何らかの意思や目的を持つのだろうか。
異質な知性体との遭遇を描く20世紀の古典。
ポーランド語原典からの新訳版


「きみには自分が何者なのか、どうしてわかるんだね?」(250ページ)


旧訳「ソラリスの陽のもとに(1977)」は、十数年前に読んだ記憶が。
家のどこかにあるはずなんですが、見つかりません。
我が家には知性を持った海はない代わりにブラックホールがあるみたいで、いろんなものが姿を消します。

細かい内容をほぼ忘れていたおかげで、大変面白く読めました。
これも忘れっぽいおかげです! ポシティヴ・シンキングです!

この小説はファースト・コンタクトSFであり、ホラーであり、ラヴ・ストーリーであり、異世界ファンタジーであり、架空の学問の解説書であり、端正な文学作品です。
学術論文のような堅苦しい文体はおそらく仕様でありましょう。
硬質な文章を読んでいるうちに知らぬ間に幻想世界に引きずり込まれます。

解説によると著者の意図は「全く異質な知性とのファースト・コンタクト」を描くことだったようです。
しかし傑作の宿命、多面的・多層的な魅力を持つがゆえに、いろんな読み方・解釈がなされ、2度も映画化されました。
映画ではラヴ・ストーリー面が強調されるなどしたためか、レム氏2度とも大激怒だったとか。
タルコフスキー監督の1972年作品は、一般には名作の誉れ高いですけど・・・。

著者としては、「人間」と「海」は互いにこれっぽっちも理解し合えないことが作品の要なのに、
映画ではラストでコミュニケーションらしきものが成立するような描写があったり、
主人公の両親が登場して郷愁と家族愛が描かれることに、

 「ぶちこわしじゃー!」

と怒り狂ったそうです。
星一徹ならちゃぶ台をひっくり返すところですね。
まあ私は映画はどちらも観ていないので(観てないんかい!)なんとも言えませんけど(←十分言ってる)。

徹底的に深読みして、哲学的なものを読み取る向きも多いようですが、
ストーリーをさらりと追うだけの表面的な読み方でも、十分面白かったです。
訴えかけるようなまなざしを残して消えてゆくヒロイン、ハリーの哀しみ。
救済も希望もない、突き放すようなラストの余韻。
やっぱり傑作です。

(2015.07.03)

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