ロバート・R・マキャモン/少年時代(文春文庫)

 
 不朽の傑作!


すべての「物語り好き」のかたにお勧めしたい一作です。

アラバマの田舎町に住む12歳の少年コーリーが主人公。
1964年の春の早朝、彼は父とともに牛乳配達の途中、
針金で首を締められた死体を乗せた自動車が、
深い湖にゆっくりと沈んでゆくところを間近に目撃します。
地元の人しか知らないような場所なのに、
誰からも捜索願は出ていないし、町には行方不明の人もいない。
湖に沈んでいったのはいったい誰?
そして沈む車を別の場所からじっと見つめていた黒いコートの人影は?

・・・という謎を縦軸に、60年代アメリカの boy's life を、生き生きと描く長編です。
殺人死体を目撃してしまったコーリーですが、それでも日常は続きます。
友人との出会いと別れ、愛犬の死、新しい自転車の乗り心地、いじめっ子との対決、
作文大会で念願の入賞、そして父の失業。
そんな日々を送りながら、コーリーはたくましく成長してゆきます。
ところが間もなく1年が経とうとする頃、ひょんなことから、あの殺人事件の手がかりが・・・

というわけで、枠組みはミステリなんですが、
一人の少年の成長小説としてたいへん面白く読めます。
またところどころに、超自然の世界がひょいと顔を出すこの作品、世界幻想文学大賞を受賞しています。
それから、60年代のアメリカの風俗もリアルに描かれ、風俗小説としての面も。
いろんな面を持った奥の深い作品、物語の面白さを堪能させてくれた一作です。
上下巻ですが、まったく長さを感じさせません。
少年時代〈上〉 少年時代〈下〉

(01.11.4.記)


「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ