小川寛興/交響曲「日本の城」
(外山雄三・指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 )



Amazon : 交響曲「日本の城」


みなさんは大河ドラマはお好きですか?
私はここ数年あまり見ていませんが、昔は熱心に見たものです。
「黄金の日々」 「独眼竜正宗」 「花の乱」とか、よかったなあ・・・って、古すぎですか?

大河ドラマのテーマ曲がまたいいんですよね。
フルオーケストラを贅沢に鳴らし、和の要素も取り入れて、日本人の琴線に触れる音楽ばかり。

 しかし短い! 1分少々で終わってしまいます。

テーマ曲だから当然ですが、もうちょっと長く聴きたいなと思わずにはいられません。

ところが、あったんですね、大河ドラマのテーマ曲が40分続くみたいな交響曲が!

 小川寛興/交響曲「日本の城」

明治100年を記念する企画として1967年キングレコードが委嘱し、1968年に完成しました。
作曲者小川寛興(1925〜2017)は、「月光仮面」「怪傑ハリマオ」「仮面の忍者赤影」「おはなはん」など主にTVの分野で活躍した作曲家。
「さよならはダンスのあとで」「虹色の湖」などの歌謡曲も作曲しています。

LPの解説には
「最近、ややもすると難解で前衛的な作品を、むしろ芸術的なものとして迎えるような風潮がないでもありませんが、
 本作品ではつとめて難解を避け、美しい旋律を主に、日本的な和声を強調し、多くの日本的なリズムを組み合わせた作品としました」

とあります。

管弦楽に加え、龍笛、琵琶、尺八、筝、十七弦、小鼓、大鼓、法螺貝、胡弓、そして混声合唱という大編成。
さまざまな和楽器のための協奏曲の形をとりつつ、築城から戦、落城までを物語風に描き、
最後は歌詞のない合唱も加わり「城への賛歌」を高らかに歌い上げます。

第1楽章 築城


龍笛のソロで静かに始まります(フルートではありません)。
1分ごろから管弦楽が加わり、筝が活発に飛び込んできて、「筝協奏曲」の様相に。
人々が力を合わせて城を作り上げる様子を想像しながら聴きましょう。

第2楽章 天守の城


天守閣の威容を表現するかのような荘厳なアダージョ楽章、「尺八協奏曲」になっています。
尺八のむら息が醸し出す独自の和の世界。
思わず床の間の前で正座して抹茶をたしなみたくなります。

第3楽章 戦いの城


戦を表現したスケルツォ楽章。
法螺貝が響き、鼓や龍笛が緊迫した様子を描写します。
まさしく大河ドラマの合戦シーンのサウンドトラックかと思うほど。

第4楽章 炎の城


戦国時代、戦で敗れたとき、落城を前に城を焼くのがならわしだったといいます。
重々しいレントに始まり、覚悟を決めた城主によって火が放たれ、金管が咆哮します。
1分30秒からは琵琶がかき鳴らされます。
琵琶といえば「平家物語」。  
諸行無常の響き、盛者必衰の理をあらわす楽器。
焼け落ちて静まり返った城の廃墟に、4分20秒から諦観を噛みしめるように胡弓のソロ、さらに死者を弔うかのように歌詞のない合唱が続きます。

第5楽章 不滅の城


前の楽章からアタッカで続きます。
トランペットのファンファーレに始まり、在りし日の天守閣の威容を称えるスケールの大きなフィナーレ。
筝、竜笛、尺八などこれまでに登場した和楽器も一堂に会します。
クライマックスの盛り上げは、ちょっとこっぱずかしくなるほどですが、とにかくスカッとします。


いや〜、日本です!
これでもかというくらい日本的です、日本人のDNAがツンツン刺激され、紅白の二重らせんが細胞の中で舞い踊りそう。
お正月にでも演奏したらウケること間違いなしですが、何種類もの和楽器に加えて合唱まで必要なので、演奏はなかなか大変でしょうね。
あと外国人にも超ウケそう。

ところで和楽器とオーケストラを融合させた作品としては、尺八と琵琶を独奏楽器とするかの有名な武満徹「ノヴェンバー・ステップス」も、
奇しくも同じ1967年に作曲されています。
方向性も知名度もかなり異なりますが、聴き比べると面白いです。

交響曲「日本の城」、和楽器を用いたオーケストラ曲の先駆として「ノヴェンバー・ステップス」と並び称されてしかるべきじゃないかと思ったりします。

(2025.12.28.)


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