ブリジット・オベール/森の死神・雪の死神
(ハヤカワ文庫 1997年・2002年)



<森の死神>
  主人公は36歳の女性、エリーズ。
 彼女は爆弾テロに巻き込まれ、全身麻痺のうえ目も見えず口もきけない境遇。
 できるのは聞くことと、左手の人差し指をわずかに動かすことだけ。
 献身的な家政婦イヴェットの世話で、自宅療養を続ける彼女ですが、
 ある日スーパーの駐車場で、ヴィルジニーと名乗る少女が話しかけてきます。
 ヴィルジニーは、
森の死神が子供達を殺している、あたしはそれを見たの」というのですが、
 目も見えず口もきけないエリーズには、それが本当か嘘かわかりません。
 やがて彼女は、少年の他殺体が森で発見されたことを知り、どうやら嘘ではないと気付くものの、
 ヴィルジニーのことを誰にも伝えるすべがありません。
 (どうしてあの子は、口のきけない私に秘密を告げたのだろう? 普通の人に話せばすぐ警察に知らせてくれるのに・・・?)
 そうこうするうち、エリーズは正体不明の人物から命をねらわれるはめに・・・。

<雪の死神>
  全身麻痺・全盲の身でありながら、連続少年殺人事件をみごと解決に導いたエリーズはいまや有名人。
 雪のリゾートを訪れた彼女は、近くにある障害者センターにゲストとして招かれます。
 そんなエリーズのもとに、「ファンから」高級ステーキ肉が贈られます。
 しかしそのころ近所の村で女性が猟奇的に殺され、肉を切り取られるという事件が発生、
 そう、エリーズに贈られたのは、殺人被害者の人肉だったのです!
 彼女はまた否応なく事件に巻き込まれてゆきます。
 やがて彼女の滞在する障害者センターの中でも殺人事件が発生、
 ひょっとすると犯人はこのセンターの中に?


・・・フランスの女流作家、ブリジット・オベールは、トリッキーな作風が持ち味で、
どの作品も、独特の癖とケレン味で満ち溢れています。
森の死神」は、そんな彼女の代表作。
全身麻痺で目が見えず口もきけない女性が探偵役という、なんとも極端な設定です。
おまけに主人公の一人称で語られるので、
読者には彼女の耳にしたことと考えたことからしか、状況を把握できません。
当然、そこに叙述トリックを仕掛ける余地が生まれてきます。 巧みな語り口です。
後半から物語は二転三転、怒涛の展開で一気に読ませます。
真犯人は、エリーズの推理で明らかになるのではなく、エリーズを殺しにきた犯人が自ら名乗ってくれるので、
厳密には本格推理とはいえませんが、なかなか意外な人物。
サスペンス小説がお好きな方には、文句なくおすすめです。

続編の「雪の死神」は、面白いけれど少々悪ノリが過ぎる気も。
事件が荒唐無稽なら、動機も真相も荒唐無稽、登場人物はバタバタと死んでゆき、
エリーズは大奮闘ですが、ほとんどスーパーウーマンと化していて、かなり非現実的。
ちょっと白けてしまいますが、オベールらしいと言えばらしいです。
「森の死神」で、オベールが気に入ったかたなら、お好みでどうぞ。 退屈はしません。

(02.8.14.記)


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