嶽本野ばら/下妻物語
(小学館文庫 2004年、親本は2002年)


Amazon.co.jp : 下妻物語―小学館文庫

<ストーリー>
 竜ケ崎桃子・17歳。 「卒倒してしまいたくなるほどの田舎町」・茨城県下妻市に暮らしながらも、
 気分は18世紀のおフランス、ロココを愛し、ロリータ・ファッションに命を懸ける少女です。
 桃子はひょんなことから、特攻服で改造バイクを乗り回す、
 同い年のヤンキー娘・白百合イチコと知り合いに。
 見た目も趣味も対照的な二人の間に芽生えた奇妙な友情のゆくえは・・・。



なーんだ、「下妻」って地名だったのか・・・・(何だと思っとったんや?)
あ、それはともかく元気出ます、この本。

ストーリーはごくシンプルでございます。
性格も趣味も違う二人が、最初は反発しあいながら、次第に友情を深めてゆくという、
まあよくあるパターンでございますね。
古くは牛若丸と弁慶とか(なんか違わんか?)、トムとジェリーとか(おいおい)
ダニール・オリヴァーとイライジャ・ベイリとか(渋すぎ?)、デスラー総統と古代守とか(だんだん離れていってますけど)
古今東西、枚挙にいとまがございません。
しかし本書を凡百の友情物語と一味違うものにしているのは、語り手である桃子のすっとぼけた語り口でございましょう。

私はエレガントなのに悪趣味で、ゴージャスなのにパンクでアナーキーであるというロココという趣味にだけ、
 生きることの意味を見出すことができるのです」
(10ページ)
「そんな目立つ、変な格好をしなければ、普通にお友達もできるのに、男子にもモテるのに・・・
 というような忠告をされればされる程、私のロリ魂は燃焼し、もっとロリを極める決心は固まります」
(12ページ)
と言い切り、愛するブランドの服を買うために父親をだまくらかして金をせしめ、
「私は本当に心根が腐っております」60ページ)とうそぶく桃子は、
ある意味しっかり自分の世界を持ち、孤高と孤独をつらぬいているのでございます。

一方のイチコは、中学時代はいじめられっ子、一念発起して高校デビューしたツッパリ娘。
喧嘩に勝てば、「憶えてやがれ、こん畜生」と妙なタンカを切り、
特攻服には「御意見無用」ならぬ「御意見無様」と刺繍を入れと、見事なまでのお馬鹿っぷり、
ひたすら笑わせてくれるのでございます。

族仲間からリンチにかけられそうになるイチコを助けるため、桃子が疾走するクライマックスも、
いや盛り上がること盛り上がること。
さわやか友情物語の傑作でございますな。

桃子もイチコも、実はある分野で人にはないすぐれた才能を持っている、
という設定は少々できすぎでありましょうが、まあ話の展開上しょうがないか。

深田恭子、土屋アンナ主演の映画もDVDで観ましたが、これまた楽しかったです。

ところで、桃子言うところの「卒倒してしまいたくなるほどの田舎町」下妻ですが、
どう考えても私の住んでいる町のほうが田舎のような気がするのです。
「フッフッフッ、勝った」・・・って、こんなことで勝ち誇ってどないするんじゃ!?

(05.4.18.記)

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