朱川湊人/都市伝説セピア(文芸春秋 2003年)


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「昨日公園」最高!!


私はホラーは嫌いです。(ホラ話は好きですが)
怖いもの全般苦手です。子供と遊園地に行ってもジェットコースターには乗りません(子供は大はしゃぎで2〜3回乗ります)
幽霊が出るといううわさのトンネルも、夜は絶対通りません。
そんな私ですが、「新感覚ホラー」として話題のこの本は、面白く読めました。

 あまり怖くないのです。 (それってほめてるのかなあ・・・)

お祭りのいかがわしい見世物、江戸川乱歩の小説、大阪万博など、
懐かしい郷愁を感じさせる道具立てで、昭和30年代前後に生まれた人間には胸キュンものだったりします。

5編の短編が収録されていますが、一番良かったのは「昨日公園」
その公園では時間が一日前に戻ることに気づいた少年は、親友の事故死を防ごうと奮闘しますが・・・
ラストが鮮やかです。 少年のけなげな姿に、子供を持つ親なら泣いてしまうかもしれません。

自ら都市伝説を作り出し、都市伝説になりきる男を描いた「フクロウ男」も、オチが決まっています。
殊能将之「ハサミ男」を連想させる筋立てで、ホラーというよりはサイコミステリーです。

「月の石」は、出だしは怖いですが、終わってみれば重松清のほのぼの系サラリーマン小説に不思議感覚を注入したような一編。

ホラーとしてはあまり怖くないですが、完成度の高い短編小説集といえます。
トータルなまとまりがあるのも良いですね。
なお、著者の名前は「しゅかわ みなと」と読みます。

(04.5.8.記)

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