ベートーヴェン:交響曲全集(6枚組)
(ヘルマン・シェルヘン指揮 スイス・イタリア語放送管弦楽団)

(1965)



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Tower@jp : ベートーヴェン/交響曲全集(シェルヘン)


「もっとも破れかぶれなベートーヴェン交響曲全集」

の名をほしいままにしている、

ヘルマン・シェルヘン指揮 スイス・イタリア語放送管弦楽団(1965)

のボックスセットが安く再発されたので買いました。
以前から聴きたかったのです、これ。
観客を入れたスタジオ・ライヴ形式で録音された全集。
これまでに聞いた評判は、

 「無茶苦茶なテンポ(速すぎるやろ!)」

 「アンサンブル崩壊寸前!」

 「縦の線ずれまくり!」

 「音は外しまくり!」

 「シェルヘン叫ぶ叫ぶ!」


と、もう絶賛の嵐

否応なく期待は高まります。

・・・で、聴いてみると。

おや、意外なほどマトモではあーりましぇんかーマイケルシェンカー。
テンポは速いことは速いけれど、古楽器派のスリム&ファストな演奏に慣れた耳には、それほど違和感ありません。
ジンマンとかガーディナーも、結構速いですから。
しかしまあ50年前なら確かにびっくりでしょうね。

第1番・第3番「英雄」・第5番は、21世紀のクラヲタの耳には「ん、ちょっと速いかな?」と思うくらい。
ちなみに「英雄」第2楽章中間部の泥臭いまでの盛り上がりはマジ感動。
この泥臭さは現代にはないわ〜。
そして終楽章のラスト近くではシェルヘンが何かに憑りつかれたように吠えまくります(ちょっと怖い)。

基本的にどの曲もダイナミックでエネルギッシュ、「イケイケドンドン」なノリが標準装備されています。
シェルヘンの雄叫びが「行け野郎どもー!」とオケを煽り、一同得たりや応と火の玉のように突撃。
音が外れたからどうしたっちゅうねん、芸術は爆発や!と言わんばかり。
自ら信じるベートヴェン像に向かって、ひたすら突っ走る姿は妙に清々しい。

全体的に偶数番号のほうが推進力あるような。
第4番なんて、あの名盤・クライバー/バイエルン響がかすむほどの熱い演奏。
もちろんクライバーの怜悧さ優雅さはなく、「野生の4番」って感じですが。

第6番「田園」も快速!
のどかな田舎を全力疾走で駆け回るベートーヴェン。
フィナーレではリードヴォーカルかいと突っ込みたくなるほど吠えまくるシェルヘンです。

第8番の第1楽章は、速すぎて笑ってしまいます。
そんなに急いでどこに行く?
私も人前でチェロ弾いているとなぜか次第に速くなってきて、「誰か止めて〜」状態になることがありますが、これは違います、確信犯です。
この破天荒な棒にしっかりついていくオケ、見事です、大拍手!

 

第9番、超問題作。
最初の2楽章はまあマトモですが、第3楽章は「アレグレット?」と言いたくなるほどの超速演奏。
そしてフィナーレは凶暴な爆演。
この演奏を何と言えばいいのか・・・・・・オケは必死、歌手は悲鳴、指揮者は叫ぶ、なんだこの熱さは? 
聴き終えたとき異様な感動に満たされます。

一度聴いたら忘れられません、二度聴きたくなるかはわかりません。
しかしベートーヴェンがこれを聴いたら、「友よ!」とシェルヘンを熱く抱擁するのでは、という気もします。
ある意味、「真の芸術」なのか?

(2015.06.03.)


Hermann Scherchen
(1891〜1966)



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