ユヴァル・ノア・ハラリ/サピエンス全史
(柴田裕之・訳 河出書房新社 2016年)
Amazon.co.jp : サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
Amazon.co.jp : サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
妄想と虚構が文明を作り上げた!
親分:ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」、
これぞここ数年で最高の脳味噌刺激本だっ、最高の目ウロコ本だっ!
ガラッ八:サピエンスって、ホモ・サピエンス? つまり人類の全歴史ってこと? スケール大きいですねー。
親分:数万年前にはアフリカの片隅で細々と暮らしていたホモ・サピエンスが、ネアンデルタール人など、他の人類種を抑えて地球を支配できたのはなぜか?
ちなみにネアンデルタール人のほうが腕力は強かったし、脳も大きかったそうだ。
ガラッ八:んー、口がうまかったからとか?
親分:いい線いってるぞ。 嘘というか架空の物語を作り上げ、みんなでそれを信じる力があったからだというんだ。
宗教も、国家も、貨幣も、民主主義も、いってみればすべて虚構と妄想なんだよ。
でもみんなが同じ虚構を信じれば、力を合わせて強力な社会を創ることができる。
ガラッ八:嘘から出たマコトってやつですね。
親分:空想や嘘を語る能力を持つのはサピエンス(人類)だけ、おそらくネアンデルタール人にはその能力はなかったらしい。
ガラッ八:へえー、あっしも生まれてこのかた嘘をついたことはないでやんす。
親分:そういう嘘をつく能力がなかったってわけだな、ネアンデルタール人には。
ガラッ八:で、それがこの本の結論でやんすか?
親分:いや、むしろ出発点。
サピエンスが、虚構を信じる力を集めて社会を作り、地球を支配するまでを描いた一大スペクタクルだ。
すごいのは、歴史学、社会学、考古学、生物学、心理学、宗教学、生命科学など、様々な学問領域を軽々と横断して、チョー広い視野から俯瞰していることだな。
ガラッ八:へえ〜、どういう勉強すれば、そんなことができるんでしょうね。
親分:著者は恐ろしく好奇心旺盛なんだろうな。 読者の視野もぐんと広がるよ。
イスラエル生まれのユダヤ人だが、いろんな宗教に対して冷静かつ客観的に対峙しているのも好感度大。
しかも言うことがいちいち納得でき、腑に落ちる。 「ガッテン!」ボタンが手元にあれば連打間違いなしだ。
ガラッ八:「ガッテン!」「ガッテン!」「ガッテン!」・・・親分、あっしの頭をポンポンたたくの、やめてくれませんか。
親分:さらに常識をくつがえされる斬新な切り口! いきなり驚かされるのはこれだ。
「農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ」(上巻107ページ)
狩猟採集生活から農耕生活への変化は「進歩」だと言われているが、そうではないというのが、著者の主張だ。
こうも言っている。
「小麦という植物から見れば、人類を働かせて小麦を増やさせ、生育範囲を世界中に広げることに成功した」
ガラッ八:小麦のDNAが超たくさん複製されたわけですからね・・・でも食べられちゃうんですよね。 DNA的にはそれでいいんですかね。
親分:農業革命の結果、人類は定住することを覚え、人口も増え、社会が形成された。
しかし同時に土地に縛られ、狩猟採集時代より労働時間は長くなった。
人口が増えたことでひとりが得られる食べ物はかえって減ることもあったし、貧富の差や搾取も生まれた。
つまり社会は発展したけれど、各個人が以前よりも幸福になったかといえば、必ずしもそうではないんだな。
ガラッ八:そうそう、あっしも親分から搾取されてるような気がして仕方ないでやんす。
親分:こないだおごってやった酒、やっぱり金払ってもらおうかな。
ガラッ八:うそうそ、うそだっぴょ〜ん!
親分:「文明は人類を幸せにしたのか?」という問いかけ、じつに考えさせられる。
この本を読む限り、サピエンスは文明を発達させることには長けているが、それを個人の幸せに変換する能力はあまり高くないようだ。
ガラッ八:そーっすかねえ? あっしはけっこう毎日楽しく暮らしてますけどね。
親分:この世界、お前みたいな極楽トンボばかりじゃないんだよ。
最後の章では、サピエンスはこれからどこに向かうのかを大胆に予言している。
遺伝子工学の発展により、一歩進んだ「超サピエンス」がいずれ登場することはほぼ確実みたいだな。
ガラッ八:そんなSFみたいな話になっちゃうんですか。
親分:もちろんそれが人間の幸せにつながるのかどうかはまた別の話だが・・・。
うーん、幅広過ぎて深すぎて、この本の内容についてざっくり語るなんて不可能だ。
「とにかく読め!」と言うしかないのがもどかしいぜ。
ガラッ八:わかりやした、さっそく読むでやんす。 それじゃ親分、借りていきま〜す。
親分:おう、読み終わったら返してくれよ。
ガラッ八:へい、これくらいの本なら、3か月もあれば十分でさあ。
親分:3か月って・・・お前の脳はホントにホモ・サピエンスなんだろうな!?
(2017.06.29)