ロット/交響曲 ほか
(ヴェイグレ指揮 ミュンヘン放送交響楽団)
(Arte Nova 82876 57748 2)



Amazon.co.jp : ロット:交響曲第1番


夭折の天才作曲家、ハンス・ロット(1858〜1884)。
私は最近まで知りませんでした。
ブルックナーの弟子で、マーラーの友人だったロットは、22歳でこの交響曲を完成させました。
しかし各方面から演奏を拒否されたことなどから精神のバランスを崩し、自殺未遂を繰り返したあげく、26歳で病死。
「若死に作曲家」あまたある中でも、最も悲惨なひとりでしょうね。

代表曲である「交響曲」は、ロットの死後100年以上たった1989年に初めて演奏されて以来、いくつかの録音が出ていたそうです。
今回の Weigle盤は、2003年の新録音にもかかわらず廉価盤。
私はネットで800円で購入しましたが、580円で買ったという人も。

この曲、各楽章の演奏時間は、9分21秒11分12秒→12分15秒→22分28秒と、
だんだん長くなってゆきます。 変なの。

第一楽章は、映画「エデンの東」のテーマによく似たメロディで、おだやかに始まります。
このメロディは全曲を統一するテーマとして、あちこちに顔を出します。

 

第二楽章はゆっくりとした優しい音楽。 ブラームスとブルックナーとマーラーを混ぜ合わせて、
みずみずしい若さをふりかけたような、すばらしくロマンティックな楽章です。

 

第三楽章・スケルツォは、聴いてびっくり、マーラーの交響曲第1番の第二楽章の主題にソックリです。
マーラーの1番は1888年の作曲ですから、マーラーがロットから借用したんですね。
それにしてもロットのほうが、より複雑でスケール大きく聴こえるのは気のせいかな。
優雅さにも不足しません。

 

第4楽章・長大なフィナーレ。 悠久の大地のような響きの中に、
ブラームスの第1交響曲第4楽章を思わせる清々しい主題が登場し展開され、
巨大なフーガが音の大伽藍を築き上げ、クライマックスでは最初の主題が堂々と再現されます。

 

美しいメロディが次々に現れるので、初めて聴いたときから心を奪われます。
一方、長大で複雑な構造ゆえ、何度聴いても新たな発見があります。
当時、なぜ演奏を拒否されたのか不思議です。 
よっぽど態度が悪かったとか?

このCD、演奏も素晴らしいです。 こんなに安くて良いのでしょうか。 

(04.7.15.記)

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