サンティアーゴ・パハーレス/螺旋
(ヴィレッジブックス 2010年)



Amazon.co.jp : 螺旋

今年読んだ小説のなかで一番面白い!(かもしれない)


スペインの若手作家の小説、しかも分厚いとくれば
「なんだかむつかしそう」
と敬遠したくなるのが人情というもの。
おまけに見るからに重厚な装丁に、単純で意味深そうなタイトル。

重苦しくて、哲学的な小説なのだろうか・・・?

でも、なんとなく惹かれるものがあり、読み始めました。
すると、なんとも楽しい物語だったのですこれが。


コーアン出版社の若手編集者ダビッドが命じられたのは、
全世界で1千万部以上を売る会社最大のベストセラー小説、「螺旋」シリーズの作者トマス・マウドを見つけだすこと。

じつはマウドは完全な覆面作家で、12年前から2年ごとに原稿を郵便で送りつけてくるのでした。
印税を振り込むための口座番号以外は、まったく謎。
社長も会ったことすらないのですが、そのことは極秘にされています。
しかしもう4年も新作が送られてこず、シリーズは中断したまま。
業を煮やした社長が探偵を雇って調査したところ、
マウドはブレダレッホというピレネー山脈の小さな村に住んでいるらしいこと、
原稿についた指紋から六本指の持ち主と思われることが判明。

 「ブレダレッホに行き、六本指の人物を見つけだし、『螺旋』の続きを書くよう説得せよ!」

首尾よく使命を果たせば昇進だ! と、はりきるダビッド、休暇を装って妻と一緒にブレダレッホを訪れます。
ところがこの村には、六本指の男が掃いて捨てるほどいたのです・・・・。


魅力的な登場人物たち、思わぬ展開を見せるストーリー。
ドタバタ・大笑いの陰に垣間見える真実のきらめき・・・。
久しぶりに面白い「物語」を堪能しました!!

覆面作家マウドの正体を探るミステリであり、
よく練られたプロットを楽しめるエンタテインメントであり、
幸福な人生とは何なのかを考えさせてくれる文学作品でもあります。

スペイン(というかマドリッド)の麻薬汚染ぶりにはびっくりしましたが(これって現実なんでしょうか)


それにしても、これが25歳の青年のデビュー作とは・・・ものすごい才能です。
寝食仕事忘れてのめりこんでしまいました。

(10.8.19.)


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