ヴィヴァルディ/ポーランド王子のためのコンサート
アンドリュー・マンゼ指揮/アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック
(Harmona Mundi France HMU 907230 , 1997年)



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1740年、ポーランド王子フリードリッヒ・クリスティアンがヴェネツィアを訪問。
3月21日、ヴィヴァルディが楽長をつとめるピエタ女子養育院で歓迎のコンサートが催されました。
「ミューズの合唱」というセレナータ (声と合奏のためのにぎやかな音楽。今で言うミュージカルのようなもの?) が演奏され、
幕間には、ヴィヴァルディの新曲が4曲も披露されました。

セレナータのほうはヴィヴァルディの作品ではないらしく楽譜も失われていますが、ヴィヴァルディの4曲はちゃんと残っていて、すべて第1級の傑作ぞろいです。

 シンフォニア ト長調 RV149、
 リュートとヴィオラ・ダモーレのための協奏曲 RV540、
 ヴァイオリンとエコー・ヴァイオリンのための協奏曲 RV552、
 リコーダー、シャリュモー、マンドリン、テオルボ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲 RV558

 
 このCDは、その4曲に、作品8−5「海の嵐」、作品8−6「喜び」の2曲のヴァイオリン協奏曲を加えたもの。

 シンフォニア ト長調 RV149 第1楽章
 

 リュートとヴィオラ・ダモーレのための協奏曲 RV540 第1楽章
 

これら4曲の作曲料としてヴィヴァルディは15ドゥカートあまりを受け取ったそうです(高いのか安いのかはようわかりません)。
しかしピエタの少女達の演奏を鑑賞したうえに、ヴィヴァルディの新曲を贈られるなんて、音楽好きの王子としては、最高にうれしかったでしょうね。
コンサートの後ほどなく、ヴィヴァルディはヴェネツィアを去り、1741年7月にウィーンで客死。
したがってこのCDに収められた4曲は、ヴィヴァルディ最晩年の傑作群ということになります。
彼の創作力は晩年でも全く衰えていなかったことがわかります。
すでに音盤を所有している曲が多かったので、なかなか食指が動かなかったのですが、さっさと聴いとけばよかったな〜。
こんな名盤を今まで聴いていなかったとは、ヴィヴァルディ好きとして不覚ですな。

それにしてもヴァラエティ豊かなこと。
「ヴィヴァルディはひとつの協奏曲を600回書き直しただけだ」という有名な悪口がありますが、それが大ハズレであることはこのCDを聴けば明らか。

とくにエコー・ヴァイオリン協奏曲はアイデア賞もの。
二つのソロ・ヴァイオリンが、こだまのように呼びあいます。
第2ヴァイオリンはバックステージで演奏しているような遠い音で収録されているので、本当にこだまのような響きに聴こえます。

 ヴァイオリンとエコー・ヴァイオリンのための協奏曲 RV552 第3楽章
 

リコーダー、シャリュモー、マンドリン、テオルボ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲 (タイトル長いよ〜)も楽しい曲。
たくさんの独奏楽器を自在にあやつり、にぎやかにユーモラスに盛り上がって、いかにも歓迎会向きです。

 リコーダー、シャリュモー、マンドリン、テオルボ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲 RV558 第3楽章
 

マンゼ率いるアカデミー・オブ・エンシェント・ミュ−ジックの演奏もノリノリで素敵。
ヴィヴァルディ・ファンでなくても楽しめると思います。

(03.3.21.記)

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