シェーンベルク/月に憑かれたピエロ
(マリアンヌ・プスール:ソプラノ フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮 アンサンブル・ムジク・オブリク)
(1991録音)



Amazon.co.jp : PIERROT LUNAIRE


moumoonFULLMOON LIVE が休止してしまった・・・・・・!

 え、なんのことかって?

お気に入りのアーティスト moumoon (ムームーン)は毎回満月の夜に、You Tubeでウェブ・ライヴを行っていたのですが、
2016年2月23日をもって、いったん休止となったのです。

 ああぁ、月に一度の楽しみが・・・・・・。

しかしこれで、満月いつだっけと普段から気にしたり、その夜は予定を入れないように気を遣ったり、
満月が近付くとそわそわしたりする、「月に憑かれた」状態からは解放されるわけだな・・・・・・。

 でも再開してほしいよー!

 moumoon FULLMOON LIVE 2015 December(←お気に入りの回)
 
 


さて、「月に憑かれた」から連想して、アルノルト・シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」(1912)を久しぶりに聴いてみました。
ソプラノ独唱と最少5人の室内楽奏者(楽器は8種類)のための歌曲集。
シェーンベルク(1874〜1951)無調時代の代表作のひとつです。
必殺技・十二音技法を編み出す10年くらい前ですね。

「月に憑かれたピエロ」より


この曲のソプラノには「語る旋律」(シュプレッヒシュテンメ Sprechstimme)という技法が使われます。
メロディアスな従来型の「歌」ではなく、かといって朗読のような「語り」でもない、歌と語りの中間のような歌唱で、のちの音楽に様々な影響を与えました。
いわばラップ・ミュージックの元祖あるいは遠いご先祖か。


「月に憑かれたピエロ」より第12曲「絞首台」(←これってラップじゃね?)


そして無調による器楽演奏は、1960年代にあだ花を咲かせたフリー・ジャズの萌芽に聴こえます。

音楽史的に非常に重要な作品なので、クラシックファンを自認するなら一度は聴いておきたいですが、
覚えやすいメロディはないし、これといった形式もないので、真剣に聴くのはかなり苦痛。
100年以上前に作られた音楽とは思えないほど尖がっています、狂っています、前衛的で攻撃的です。
正面から相手にせず、すこし酔っぱらって月でも眺めながら聴き流すのが吉かも(←シェーンベルクに怒られるぞ)。

歌詞はベルギーの詩人ジローのフランス語の詩をドイツ語に翻訳したもの。
月に魅せられた道化師が、酔ったようにさまよう様が、幻想的かつグロテスクに、そしてちょっぴり滑稽に描かれます。

 月光の白い花びらをそっと寄せ集め
 君の暗い褐色の髪の上に やさしく振りまいたなら
 僕の熱い思いは満たされるのさ  (第2曲「コロンビーヌ」より)

 黒い絹のクッションの上の 研ぎ澄まされた三日月刀
 悲しみに打ち沈む夜を貫いて威圧する
 道化師はさまよい歩き 恐怖に駆られて高きを見上げる
 それは月 黒い絹のクッションの上の 研ぎ澄まされた三日月刀 (第13曲「斬首」より)

 月の光を舵として 睡蓮の葉を船にして
 道化師は進む 南をさして  風をその帆に受けながら (第20曲「帰郷」より)



つぎの満月(3月23日)には、FULLMOON LIVE はもうないんだなあ。
この曲のピエロのように月でも眺めながらほっつき歩くとしますか・・・・・・(←超怪しい奴)。

(2016.02.27.)


P.S. moumoonFULLMOON LIVE は、2016年11月から再開されました!

 

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