高橋秀実/はい、泳げません(新潮社 2005年)



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言いすぎでしょう、それはあまりな言いようでしょう。

 泳げる人は人間として何かが欠けている(15ページ)

とまで言っていたカナヅチ歴40年の著者、何を思い立ったのかスポーツクラブに入会し、水泳を習い始めます。
しかしまあ、文句が多いこと。

 人を抜く場合、ひと言「お先に」と挨拶があっていいはずである。(14ページ)

あのー、山歩きじゃあないんですから。
イアン・ソープでもクロールしながら挨拶はようしませんって。

そんな著者に泳ぎを教える桂コーチ(女性)、なかなか素敵です。

 「考えちゃダメですよ。何も考えないこと。泳ぐのは歩くのと同じです。歩くとき、右、左と考えます?」
 ━ 考えません。
 「同じように無意識で、泳ぐんです」
 ━ もっと、こう、リラックスすればいいんですね。
 「それはやめて下さい (中略) リラックスして、といわれてリラックスする人はいません。だから、リラックスしようとしないで下さい」
 考えない、そしてリラックスもしない、ではどうすればよいのか?
 「それも考えないことです」 
 (45ページ)

なんだか泳げるようになる前に悟りを開いてしまいそうですが、いちど習ってみたいです、この先生には。
喫茶店でいきなりフォームの実演をして、注目を浴びたりしますが全然気にしない楽しいコーチであります(いわゆる天然か?)。
水泳のコーチのくせに

 「私だって、泳ぐのは嫌いですよ」(169ページ)

と、突然大声で言ったりする、ぶっ飛んだ人です。
この直感型コーチに対して、著者はあくまでも理屈っぽく考え込みます。
古式泳法を見学に行ったり、サルは海を泳いでいるうちに立つことを覚えヒトに進化したという説を考察したり、
何を思ったか深海生物学者に話を聞きに行ったり・・・・、
「関係ないだろーが!」と激しく突っ込まずにはいられません。

さて、著者はめでたく泳げるようになるのでしょうか・・・。
読んでるうちに泳ぎたくなってきました。
それでは、これから泳ぎに行って来まーす。 

(05.10.8.)

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