オースティン・フリーマン/オシリスの眼(1911)
(渕上痩平・訳 ちくま文庫 2016)



Amazon : オシリスの眼 (ちくま文庫)


エジプト学者ジョン・ベリンガムが不可解な状況で忽然と姿を消して二年。
失踪した彼の遺産相続問題が持ち上がった折も折、各地でバラバラになった人骨が発見される。
これらははたしてジョン・ベリンガムのものなのか?
法医学者探偵ソーンダイク博士は証拠を科学的に分析、緻密な論証を積み重ねて真相に迫っていく。
英国探偵小説の古典名作、初の完訳。


古き良き英国ミステリ


オースティン・フリーマン(1862〜1943)のソーンダイク博士もの

「シャーロック・ホームスのライバル」にして「倒叙形式の創始者」と呼ばれていることは知っていましたが、読んだことはありませんでした。

だって100年も前の小説ですからね〜。
コナン・ドイル(1859〜1930)と同年代だし「まあ似たようなもんだろう、シャーロック・ホームズはだいたい読んでるからいいか」と思ってたわけです。

ところが、ふとした気まぐれから「オシリスの眼」(1911)を読んでみると・・・。

 「めちゃくちゃ面白いやないですか!」

シャーロック・ホームズ以上に論理的です、理詰めです、本格推理してます。
探偵役のソーンダイク博士は法医学の権威で弁護士資格も持ち、指紋や血液や骨などの科学的手がかりを分析して推理する科学者探偵。
長身で温厚、友情に篤く正義感あふれる常識人、なお独身です。
シャーロック・ホームズのように、コカインで一発キメたり、ヴァイオリンをギコギコいわせて近隣住民に迷惑かけたり、
東洋の怪しげな武道に通じていたり、暇があれば変装したりといったエキセントリックなところはありません。

まあそれは弱点でもあり、やはりホームズのほうが圧倒的にキャラが立ってることは否定できません。
しかし、安心して付き合えるのはソーンダイク博士でしょう。

「オシリスの眼」は、フリーマンの傑作長編、長いですが退屈せずに読み進められます。
いかにも「古き良き英国ミステリ」であり、語り手の青年医師と、事件関係者の美女との恋愛模様など、じれったくも甘酸っぱくてとってもお上品。
ほほえましい博物館デートには胸キュンしたぜ。
そして終盤でソーンダイク博士が科学と文明の利器を駆使して真相を明らかしていく過程はとてもスリリングで、100年以上前の作品とは思えないほど。
個性的でどこか不思議な犯人像も味わい深く、忘れがたいものが。
そしてメイン・トリックの切れ味の秀逸さ、おもわず「なるほど」と声が出ました。

 素晴らしい本格ミステリ、堪能しました。

オースティン・フリーマン、いろいろ読んでみます。

(2019.6.10.)

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