ミネット・ウォルターズ/女彫刻家 (創元推理文庫)


サイコものとか、大量虐殺ものとか、幼児虐待ものは、苦手なもので
この作品も長らく敬遠していたのです。
「このミス」96年度第1位ということでずっと気になってはいたのですが・・・
今回読んで見て、意外な読みやすさにちょっとびっくり。あんまりえぐくないし。

オリーヴ・マーティンは、5年前に自分の母親と妹を撲殺し、その死体を切り刻んだ罪で
無期懲役に服している28歳の女。
身長180センチ、体重165キロの巨体の彼女は「女彫刻家」とあだ名されている。
この事件を本にするようにエージェントから命令されたフリーライターのロザリンドは
いやいやながら面会に行くが、思いもよらない高い知性を垣間見せるオリーヴに興味を持つ。
オリーヴは事件当時、母と妹を殺したことをすらすらと自白し、裁判中も一貫して罪を認めていた。
しかしロザリンドは調査していくうち、事件のあちこちに小さな矛盾をいくつか発見する。
真犯人は別にいて、オリーヴはその人物をかばっているのではないかという考えが
ロザリンドの中に芽生えはじめた・・・

ロザリンドが事件を調べ上げ、新たな関係者に会いに行き、証言を得るたびに、
事件の様相が万華鏡のように変わってい行く様は非常に楽しめます。
一方、オリーヴも謎だらけの人物で、本当に無実の罪で服役している哀れな女なのか、
ロザリンドを利用して自分は無実であるという内容の本を書かせようとしている知能犯なのか
終盤まで全くわかりません。
ロザリンド自身、離婚し、一人娘を交通事故で亡くして精神的に崩壊寸前という設定で、
事件を調査するうちに彼女が徐々に立ち直っていく過程もサブストーリーとして楽しめます。
おまけに正統派ラヴロマンスも組み込まれていて、なかなか盛りだくさんな話です、

想像していたような重たい話ではなく、
一気に楽しく読めるよくできたミステリでした。
(01.11.8.記)



Amzon,co.jo ; 女彫刻家


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