浅田次郎/王妃の館(2001年)
(集英社文庫 2004年)
Amazon.co.jp : 王妃の館(上)(集英社文庫)
Amazon.co.jp : 王妃の館(下)(集英社文庫)
<ストーリー>
パリの片隅、ルイ14世が寵姫のために建てた「王妃の館」。
パリ随一の格式を誇る高級ホテルになっているこの館が、経営難から初めて日本人ツアー客を受け入れることに。
10日間149万8千円のリッチなツアーを申し込んだのは、どこかワケありな4組7名。
しかし旅行代理店もまたワケあり。 早急に現金で1200万円集めないと倒産してしまいますが、少し不足。
急遽、同じスケジュールで、同じ宿に泊まるツアーを、19万8千円の超格安で募集。
客室を昼と夜でダブルブッキングするという、綱渡りのような二つのツアーが始まります。
タイトルからは、豪華絢爛な歴史ロマンを想像しますが、実は・・・
浪花節コテコテです!
花の都・パリを舞台に、ここまでコテコテの話が書けるとは、浅田次郎、恐るべし。
「光」ツアーも「影」ツアーも、一癖ありそうな人物ばかり、
リストラされたOL、マジメ一徹の元警官、美貌のオカマ、世界をまたにかけるカード詐欺師、
売れっ子作家、パリに自殺しにきた工場主夫婦・・・。
みんなキャラが立っています。 一度会ったら、じゃない読んだら忘れない、濃い人ばかり。
犯罪者は出てきても悪人は出てこないのが、ほとんどファンタジー。
展開は、読めます。 読めてしまうのです。
あの人とこの人が、こうからんでくるんだな〜と考えながら読んでいると、面白いくらい当たります。
「光」と「影」に、お互いの存在を悟らせないため、必死で走り回るツアコン。
ドタバタコメディのノリです。 しかし、とうとう・・・というあたりから、物語は一大・人情絵巻の様相。
また、ルイ14世と寵姫ディアナの物語も随所に挿入され、これまた人情もの。
今度は泣けっつうわけですね。 うーむ、しかし泣かせ方はちょっとあざといですよう。
でもって「泣かせ」とのバランスをとるかのように・・・
「コマンタレ・ブウウウウ(屁です)」とか、
「脱肛しながら脱稿した!」と叫ぶ作家とか、
思わずへなへなとへたり込んでしまいそうなオヤジギャグが、機雷のようにあちこちに敷設されています。
最後は皆で「清く正しく生きていれば、きっといいことあるよ」と言わんばかりのハッピー・エンド。
ここまでやられると、「許す。 なんでも許す」とつぶやきながら頭を垂れる以外に何ができるでしょうか。
・・・・要するに面白かったんですけどね。
上下巻一気読みでした。
ただし、オヤジギャグに触れると、じんましんが出る、めまいがする、発熱する等の体質をお持ちのかたは、
敬して遠ざけられたほうが賢明かもしれません。
なお、「王妃の館」なるホテルは、どうやら架空のようです(そりゃそうじゃ)。
(04.8.31.記)