プロコフィエフ/束の間の幻影 ヒンデミット/ルードゥス・トナリス
(オリ・ムストネン:ピアノ 1994録音)



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暑いです暑いです暑いです。
三連休ですが出かける気にもなれず、冷房効かせた部屋の中でメダカの水槽眺めてボーッとしています。
かわいいなメダカかわいいなメダカかわいいな(←脳が煮えかけてる)。

頭をクールダウンさせるべく、ひんやり透明クリスタルなピアノ音楽でも聴くでござる。

 プロコフィエフ/束の間の幻影 ヒンデミット/ルードゥス・トナリス(音の遊戯) オリ・ムストネン独奏

この2曲を組み合わせるセンスがまず素晴らしいと思うのです。

プロコフィエフ/束の間の幻影(1915〜17)は、才気あふれる初期の作品で、20の短いピアノ曲からなります。
長いもので1分半くらい、短い曲は26秒、ホントに束の間に消え去ってしまいます。
夢見るような曲、キラキラした曲、グロテスクな曲、ひょうきんな曲、リズミックな曲、ヴァラエティに富んでいて飽きません。
ショパン「前奏曲集」と比較したくなります。
オリ・ムストネンは柔軟な感性で、プロコフィエフの才気と丁々発止、切れ味抜群な演奏が呆れるほどにキマっています(録音当時27歳)。

 第4曲 アニマート (流れるようにすばしっこい曲)
 

 第7曲 ピットレスコ (ハープを思わせる優美でロマンティックな曲)
 

 第9曲 アレグレット・トランクイロ (いかにもプロコフィエフっぽい才気ほとばしる曲)
 

 第20曲 レント・イレアルメンテ (最後の曲。スクリャービンのような幻想性と夢のような響き)
 

さて、「束の間の幻影」がショパンの「前奏曲集」を連想させるならば、
ヒンデミット/ルードゥス・トナリス(音の遊戯)(1942)は、バッハ「平均律クラヴィーア曲集」または「フーガの技法」を思わせます。
前奏曲で始まり、12のフーガと11の間奏曲が交互に現れ、後奏曲で幕を閉じる、50分ほどの大作。
フーガの調性はすべて異なり、12の調を網羅します(長短の区別はなし)。

ヒンデミット:ルードゥス・トナリスより前奏曲


ヒンデミット:ルードゥス・トナリスより第2フーガ


ヒンデミット:ルードゥス・トナリスより第4間奏曲


なお「後奏曲」「前奏曲」の楽譜を上下ひっくり返して後ろから弾いたものでありまして、まさにバッハがやっていたような「音の遊び」です。

ヒンデミット:ルードゥス・トナリスより後奏曲



ムストネンはあくまでもシャープでクール、ロマンの残滓はすっぱり切り捨て、メカニック的に完璧な引き締まった演奏を聴かせます。
作品の特性もあいまって、「冷たい」とか「感情の起伏に乏しい」印象も覚えますが、でもこれ、ヒンデミットですからねー。
切れ味の良さ、澄んだ音色、ヴィヴィッドな音の動き、ファンタジックな快感を感じさせる、最高の名演奏です。

どちらも聴けば聴くほどにオモシロイ傑作。
「情」より「知」に訴えかけるピアノ曲も、なかなか良いものです。
「ピアノ」といえばショパンかラフマニノフよねーというアナタも、たまにはこういうのどうですか。

(2017.07.16.)

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