モーツァルト/レクイエム(シュペリング指揮/ダス・ノイエ・オーケストラ)
(OPUS111 OP 30307)




Amazon.co.jp : Mozart: Requiem (The Sussmayr Version and the Original Unfinished Version)

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OPUS111に、大編成宗教曲をいくつも録音しているクリストフ・シュペリング
新作は、モーツァルトのレクイエムです。
この演奏、最初の「イントロイトゥス」と2曲目の「キリエ」は、足を引きずるような遅めのテンポでじっくりと進めてきます。

 イントロイトゥス
 

ちょっと聴いたことがないほどの遅さです。
ずっとこのテンポでいくのかな、それも悪くないぞ、と思っていたら、3曲目「怒りの日」から速めのテンポに変わり、豪快に盛り上がります。
古楽器演奏のエッセンスもとリいれて、すっきりと軽い響きを聴かせる箇所も。

 怒りの日
 

ところでこのレクイエムは、ご存知のように未完の作品であり、約半分まで書いたところでモーツァルトは死んでしまいました。
そこでモーツァルトの弟子のジェズマイヤーが師の残したスケッチをもとに後半を完成させたわけですが、
これが近年いろいろ物議をかもし、バイヤー版、レヴィン版、マイヤー版など数々の補筆版が発表されてきました。

このディスクは、いわゆる慣行版(ジェズマイヤー版)による演奏です。

ただしオマケとして、9トラック23分にわたりモーツァルトが残した未完のスケッチをそのまま演奏したものが収録されています。
このオマケが「売り」です。 ジェズマイヤーの補筆がどのように行われたのか、よくわかります。
4声部とヴァイオリン旋律だけのスカスカのスケッチも、聴いてみるとけっこう面白いです。
最近の補筆版ラッシュに対する、まさにコロンブスのタマゴ的回答。
なんといっても、これこそがモーツァルトの真筆なのですから・・・。

 モーツァルトの未完の草稿(ラクリモーサの途中でブツッと切れます)
 

「ラクリモーサ(涙の日)」が、約46秒でぷっつり切れてしまうのが、なんだか生々しいです。
昔、「モーツァルトはこのラクリモーサを第9小節まで書いて息絶えた」と、読んだことがあったのですが
実はその次の「オッフェトリウム」も、スケッチ段階までは出来上がっていたことがわかります。
ただしそのあとの、「サンクトゥス」「ベネディクトス」「アニュス・デイ」は、スケッチすらありません。
つまりこれらの曲は完全にジェズマイヤーの創作であるわけです。
こういう形で見せて(聴かせて)もらうと実感できます。
「ラクリモーサ」の後半に挿入されるはずだった「アーメン・フーガ」も聴くことができます。
わずか22秒の断片ですが、美しいテーマです。
(ジェズマイヤーは、なぜこれを使わなかったのでしょう?)


 モーツァルト:レクイエム草稿より「アーメン」
 

もっとも、天国のモーツァルトは、

 「下書きなんか演奏するなよ〜。 まして録音するなんて!」

と、ボヤいているかもしれません。

オマケについて長々と書いてしまいましたが、メインのジェズマイヤー版の演奏もとても良いです。
モツレクを通して聴くのは久しぶりでしたが、やっぱりいい曲だな〜、と、しみじみ思ったことでありました。

(02.2.17記)



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