砂原浩太朗/黛家の兄弟(講談社 2022)



Amazon : 黛家の兄弟

神山藩で代々筆頭家老を務める黛家
17歳の三男・新三郎は、切れ者の長兄・栄之丞、豪放磊落な次兄・壮十郎とは付かず離れず、穏やかな青春の日々を過ごしていた。
そんな新三郎も人生の転機を迎え、大目付である黒沢家に婿入り、藩の政務を学び始める。
しかしある日、壮十郎が次席家老の息子と刀傷沙汰を起こしてしまう。
その理不尽な顛末に、黛家の兄弟は翻弄されていく。


久しぶりに時代小説を読みましたが、いやあ面白かった。
ふだんは時代小説が苦手な私(だって難しい漢字が多いんだもん)、たまに読んでも何日もかかるのが常ですが、
この本はほぼ一日で一気読みしちゃいました。

 砂原浩太朗/黛家の兄弟

三男・新三郎の成長がストーリーの軸で、作中では20年近くが経過します。
育ちの良い若者が政争に巻き込まれ翻弄されつつ、清濁併せ飲む食えないオヤジになってゆく過程をサワヤカに描きます。

時の流れは否応なく様々なものを変えてゆきます。
長じて目付役となった新三郎と、家老である兄・栄之丞との関係も若いころと同じではありえません。
そして少年時代に「この先も友垣でいられたら」と誓い合った親友との絆もまた。

新三郎の成長を描くと同時に権謀術数渦巻くサスペンスであり、ラスト近くで意外な真相が明らかとなるミステリでもあります。
意外な真相と言っても下品などんでん返しではなく、品格があって読後感は清々しいです。
誰が敵で誰が味方か、読者を惑わす著者の手腕は巧みで、ジョン・ル・カレのスパイ小説を思い出すほど。
「敵役」である次席家老・漆原内記のキャラも複雑な人間味を感じさせて味わいがあります。

文章も格調高く、それでいて読みやすいです。
上手い作家さんだなあ。
なお、新三郎の奥さんのツンデレぶりには萌えました(ここだけラノベかと思うほど)。

次の直木賞の最有力候補ではないでしょうか。

(2022.02.11.)

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