松平頼則作品集(ナクソス 8.555882J)
高関健・指揮、大阪センチュリー交響楽団




Amazon.co.jp : 松平頼則:ピアノとオーケストラのための主題と変奏

Tower@jp : 松平頼則/ピアノとオーケストラのための主題と変奏 ほか

<収録曲>
ピアノとオーケストラのための主題と変奏
ダンス・サクレ(振鉾)
左舞
右舞
ダンス・フィナル(長慶子)


ナクソス・レーベルのニュー・リリース。

松平頼則(まつだいら よりつね)(1907〜2001)は、雅楽とクラシック(というか現代音楽)の融合という面白いことを追求した人だそうです。

最初に収められた「ピアノとオーケストラのための主題と変奏」(1951)の主題は、雅楽の「越天楽」
その越天楽をよく知らない私、日本人として少々情けないですが、
なんでも「黒田節」のもとになったメロディだそうで、おお、そういえばどこか面影がある。
余談ながら、高校野球で「かっとばせー、○○」と応援する時の曲、あれも確か越天楽なんですよね。なんでだろう。
この管弦楽だけで演奏される主題部分、ミヤビな感じで非常によろしいです。
そしてピアノが華々しく重々しく登場、第1変奏はロマン派っぽく濃厚で、かつ日本的な美しい変奏。
第2変奏はテンポを速めてプロコフィエフ風か。ピアノのアルペジオが華麗。
第3変奏では突然12音技法になり、第5変奏はジャズっぽくなったりと、サービス精神旺盛。
最後に主題が、ピアノと管弦楽で重々しく再現されて曲を閉じます。
全部で17分ほど、コンパクトにまとまったピアノ協奏作品として、とても楽しめます。

 ピアノとオーケストラのための主題と変奏
 

次の4曲は、1957年から59年にかけて作曲されました。
実際の舞楽の流れに従って作られているとのこと。
「ダンス・サクレ」は、いわば序曲で、ピッコロとフルートが活躍する室内楽風。
重々しい太鼓の合いの手が王朝風?
もろに無調で12音技法なのに、一方でとても日本的・雅楽っぽい、不思議な肌合いの音楽です。

次の「左舞(さまい)」は・・・あんまりにも単調でちょっと辛い。
メロディらしいメロディはなく、さまざまな音色の音を使って描かれた点描抽象画のよう。
打楽器だけの部分が延々続いたりもします。
一風変わったBGMとして聴き流しているぶんには悪くないのですが、集中して聴くのはどうも・・・です。

「右舞(うまい)」は、「序・破・急」形式になっていて、「左舞」よりは活気と変化があります。
鼓を模した打楽器と、金管楽器のひっくり返りそうな音が、とぼけた感じで面白い、妙にユーモラスな曲です。
でもやっぱり単調だなあ。 振付師が振付けたら、どういう踊りが出来上がるかな。

最後の「ダンス・フィナル」は、舞楽において、観客が退場するための音楽。
これまた点描的にぽつぽつばらばらと音が降ってくる様な感じの曲です。
もし私が観客だったら、たぶん爆睡してますね。この曲では起きられないんじゃないかと思います。

 ダンス・フィナル
 

・・・最初の「主題と変奏」はとても面白かったのですが、あとの曲は残念ながら御気楽リスナーの理解を絶していました。
ただこのCD、1000円程度で手に入りますから、「主題と変奏」のためだけにでも、あるいは話のネタとして、買って損はないかもです。

(03.7.27.記)


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