島田荘司/摩天楼の怪人
(創元クライム・クラブ 2005)




Amazon.co.jp : 摩天楼の怪人

Amazon.co.jp : 摩天楼の怪人 (創元推理文庫)


<ストーリー>
1921年、ニューヨークの高級マンションセントラル・パーク・タワーで、3人の舞台女優が自殺し、
2人の興行主が殺害され、ビルの設計者が転落死するなど、怪事件が連続するも結局迷宮入り。
時は流れて1970年、臨終の床にあった往年の大女優ジョディ・サリナスは、
「あのとき興行主フレデリック・ジーグフリードを射殺したのは私」と告白します。
しかし事件当日は停電中。 34階にいた彼女が、エレベーターを使わずに1階にいた被害者を殺害するのは不可能。
 「でも私が殺したのよ。 さあミタライさん、私がどうやったか解るかしら」
ジョディの臨終に立ち会った御手洗潔は、彼女の挑戦を受け、50年前の事件を捜査しはじめます。


600ページ一気読み!

奇想天外な一種のホラ話、楽しく読めました。 いやあ、こういうの好きです。
「オペラ座の怪人」の本歌取りであり、セントラル・パークNY摩天楼に関するウンチク小説。
NYに行きたくなっちゃいます(行ったことありません・・・)。

そして快調&明快でサクサクした文章、読んでて気持ちいいなあ。
最近の島荘さん、「ハリウッド・サーティフィケイト」「ネジ式ザゼツキー」などの近作は、
少々ムツカシイというか、ぶっ飛びすぎていて、ビール飲みながらボーッと読んでいると、
「わ、わ、わけわからん〜」と酔いが速く廻ってとってもお得・・・ってそういう問題か。
本作はエンタテインメント重視の傾向がありありで、個人的には嬉しいです。

ミステリ・テイストももちろん満載ですが、緻密な本格ミステリを期待すると、ちょっと違うかも。
魅力的な謎と、論理的な解決は充分楽しめますが、それ以上に理屈抜きの冒険譚であります。
なぜかルブランのルパンもの、「813」とか「奇岩城」を思い出しながらワクワク読みました。
かつての島荘名作群の雰囲気もあちこちで味わえまして、
コアなファンは、ここは「斜め屋敷」みたいだぞとか、こりゃまるで「暗闇坂」じゃんか、
などと思ってニヤリとするわけですが、べつに以前の作品を読んでいなくても無問題。
御手洗潔が、完全無欠な天才名探偵であることだけ諒解しておいて頂ければそれで結構でございます。
もちろん、「なんでそんなことがわかるんじゃー!」「お前は神様か!」とツッコミながら読んでもそれはそれで楽しいです。

ところで、「摩天楼」の「ま」って「魔」じゃなかったんですね。
いままで知らんかった〜(恥)。

(06.4.16.)

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