石井宏/天才の父・レオポルド・モーツァルトの青春
(新潮社 2008年)
Amazon.co.jp : 天才の父レオポルト・モーツァルトの青春
父として幼き者は見上げ居りねがわくは金色の獅子とうつれよ 佐佐木幸綱
という有名な短歌があります。
私も父親として、金色の獅子とはいかなくても、
たくましい雄鹿(角つき)くらいに見えてるといいなあ、と思っていますが、
実際には酒飲みのナマケモノ程度にしか見られていないかも・・・。
さて、音楽史上もっとも有名な父親といえばなんといっても
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの父・レオポルド・モーツァルトでしょう。
幼いヴォルフガングの天才を見抜き、英才教育をほどこし、
「神童」として各地の宮廷に売り込んだレオポルドとは、
そもそもどういう人だったのでしょうか。
貧しい製本職人の家に生まれたレオポルドは、
子供のころから頭がよく、美声で、オルガンやヴァイオリンも大得意。
16歳のとき父親が亡くなりますが、
地元の神父の推薦でザルツブルグ大学に入学を許されます。
これは当時としてはエリート中のエリートコースであり、
貴族でない平民としてはきわめて異例のこと。
やはり天才の父はタダモノではなかったのですね。
しかし、彼の前には、思いもかけない波乱が待ち構えていました。。。
レオポルド・モーツァルトの半生を小説風に描いています。
すぐれた才能を持ちながら、貧しい生まれのために何度も苦杯をなめるレオポルド。
本書はヴォルフガングが誕生するところで終わっていますが、
著者は全5冊におよぶ壮大な「モーツァルト家のサーガ」を執筆する予定だとか。
文章はこなれていて読みやすいです。
もう少し重々しい語り口でも良かったんじゃないかと思うくらいですが、
モーツァルトに多少でも興味のある方なら面白く読めること間違いなしです。
(08.9.16.)