ジョン・ハート/ラスト・チャイルド
(2009)




Amazon.co.jp : ラスト・チャイルド (ポケミス版)

ラスト・チャイルド(文庫版)(上) ラスト・チャイルド(文庫版)(下)

<ストーリー>
十三歳の少年ジョニーの人生は一年前のある日を境に一変した。
双子の妹アリッサが、何者かに連れ去られたのだ。
父親も、娘が誘拐されてまもなく謎の失踪、
警察は手掛かりすら発見できず、母親は心を病み薬物におぼれる。
だがジョニーはくじけない。
家族の再生を信じ、親友ジャックと共に妹の行方を探し続ける。



重厚で端正な傑作ミステリ!


翻訳ミステリ・ファンの間で超絶賛・人気上昇中のジョン・ハート
「キングの死」「川は静かに流れ」につづく第3作です。

早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品として、
ポケミスとハヤカワ・ミステリ文庫で同時発売されました。
値段はどちらも同じです。
私はポケミス版で読みました。
1冊に収まるほうが手軽でいいと思ったのですが、思わぬ欠点が。

  活字が小さい・・・。

老眼気味の方は、文庫のほうが読みやすいかもしれませんが余計なお世話ですかそうですか。

例によってアメリカの地方都市が舞台で、
例によって家族の崩壊と再生の物語で、
例によって重厚で重苦しい展開ながら読み応えたっぷりで、
例によって分厚いです。

そもそも子供が殺されたりひどい目に会ったりする話は苦手なので、
今回も「なんだかなあ・・・」と思いながら読み始めたのですが、
問答無用な圧倒的迫力の前にあっさり膝を屈し、気がつけば一気読み。
活字の小ささも忘れて読みふけりました。

重く悲しい物語ですが、抒情に満ちた格調高い語り口で、まるで正調悲劇のよう。
クライマックスで、登場人物が次々に死ぬところは、まるでイタリア・オペラのよう。
そして明かされる意外な真相・・・。

ご都合主義といえば言える箇所もたくさんありますが、
すべての登場人物やアイテムは、ひたすら物語に奉仕するために存在し、美しい大団円を形作ります。
そう、結局のところ物語自体が主人公、なにか神話的なものを読んだような印象が残ります。

かすかな希望を感じさせながら甘くないラストも味わい深いです。

(10.7.29.)

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