筒井康隆/旅のラゴス(1986)
(新潮文庫)

Amazon.co.jp : 旅のラゴス (新潮文庫)


<ストーリー>
高度な文明を失った代償として、
人々がわずかな超能力を獲得し始めた世界を
ひたすら旅する男ラゴス
集団転移、壁抜け、予知などの体験を繰り返し、
二度も奴隷の身に落とされながら、
生涯をかけて旅をするラゴスの目的とは?


東日本大震災から3週間以上がたちました。
私の住む四国の片田舎は申し訳ないくらい何の被害もなく、
いつもと変わらぬ日常が続いていますが、
その日常がどれほどもろいものかを思い知らされた3週間でした。

津波被害や、原子力発電所問題の報道をTVで観ていると、なんだか終末的な気分になってきて
思わず筒井康隆「驚愕の曠野」「幻想の未来」 を本棚から引っ張り出して読んでしまいました。
そして、ますます暗くなってしまいました。

いかんいかん。
読みたいのはこういうのじゃなかった。

たしか筒井康隆だったんだけどなー、
主人公が旅をして、世界の秘密を探りだし、失われた文明をよみがえらせようとする・・・
あれはなんだったかなあ。


・・・思い出しました。

 「旅のラゴス」でした。

筒井康隆にしては珍しくナンセンスでもブラックでもスラップスティックでもありません。
数々の試練にめげず、世界の謎を解明するため、ひとり旅をする男を描いた、じつにまっとうな物語

久しぶりに再読しましたが、やっぱりええハナシですね〜。
筒井康隆にしてはが無くて物足りないとか、主人公がいい人すぎるなんて言ってはいけません。
明日を生きる元気が得られる気がします。

苦しい旅の日々、どのような境遇に落とされても
常に前向きな主人公ラゴスの姿に、あやかりたいものです。

そしてこのラゴス、めちゃくちゃモテるのです。
これもあやかりたいです!

「旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。たとえ死であってもだ。」(224ページ)

(11.4.3.)



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