中山可穂/ケッヘル
(文藝春秋社 2006年)

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なんつう「濃い」小説だ・・・

<ストーリー>
フランスの港町・カレー。 恋人から逃れるように日本を後にし、欧州を放浪していた木村伽耶は、
岸壁で海に向かって一心不乱に指揮棒を振る日本人男性・遠松鍵人(とおまつ けんと)と出会う。
旅行会社社長でモーツァルト・マニアの鍵人は伽耶に、鎌倉のマンションの留守番と猫のエサやりを依頼。
ちょうど里心がつき始めていた伽耶は、彼の言葉に従いひとり日本に戻り、やがて鍵人の旅行社で働き始める・・・。



てっきりケッヘル(モーツァルトの作品を年代順に整理しケッヘル番号をつけた人)の伝記かと思ったら・・・。

 全然違いました。

いやあ、出だしからして凄いです。
海に向かって指揮ですよ指揮。 そんな男を見かけたら普通は走って逃げるもんです。
ちなみに鍵人が振ってたのはモーツァルトの交響曲第39番変ホ長調K.543。 選曲は良いですね。

で、てっきり伽耶鍵人のラヴ・ストーリーかと思ったら・・・

 全然違いました。

・・・なんともジャンル分けしにくい小説です。
禁断の恋愛あり、父と子の情愛あり(ちょっと「砂の器」入ってます?)、高校生の純愛あり(ちょっと「愛と誠」入ってます?)
舞台は日本、ウィーン、プラハ、ベルリン、パリへと拡がり、過去と現在が交錯、ついに起こる血なまぐさい事件、復讐劇・・・。
韓流ドラマもびっくりの「ありえねー」なドロドロ&コテコテ・ストーリー、勢いで一気読み!
ストーリーは複雑ですが、文章がドライで引き締まっているので、とてもテンポ良く読めます。
しかしこの連中、ホントに日本人か・・・? 血の気多すぎ。 面白いけど。
あちこちで引用されるモーツァルトの曲とウンチクが、いい薬味。 
モーツァルトだから良いのですね、これがワーグナーショスタコーヴィチだったら・・・読んでいられるかっ!。

内容に関する予備知識を持たないほうが楽しめる小説だと思いますので (・・・ここまで書いといて言うか)
「読んでみよう」と思われた方は、極力情報収集せずに、とにかくひもといてみられては。
熱いですよー、濃いですよー。 異次元にトリップするような、こってりした物語世界が満喫できます (注:SFではありません)
読み終わったときには体脂肪率が若干増えたような気すらしました。
夏に読むなら、エアコンの効いた部屋で、冷たい飲み物を傍らに置いてどうぞ。
もちろんBGMはモーツァルト。 私はこれを読んで 戴冠式ミサ ハ長調 K.317 を久しぶりに聴きました。

(06.7.23.)

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