ジル・ボルト・テイラー/奇跡の脳
(竹内薫・訳  新潮社 2009年)


Amazon.co.jp : 奇跡の脳


努力の末に脳科学の専門家となり、
ハーバードの第一線で活躍するわたしは、
誰よりも脳について知っているはず、だった―。
1996年のある日、37歳で脳卒中に襲われ、わたしの生活は一変する。
左脳の機能が崩壊し、言葉や身体感覚だけでなく、
世界の受け止め方までも変わったのだ。
体力の補強、言語機能を脅かす手術、8年間に及んだリハビリ。
そこでわたしが得たものとは、何だったのか。
脳卒中になりうるすべての人に―。


親分「脳トレ」が流行ったり、脳科学者がTVに出たりと、
  「脳」に注目が集まっているな。
  いまやちょっとした「脳ブーム」だ。

ガラッ八:流行ってるんですか〜「脳」。 
  流行には乗る主義でやんす。
  あっしもひとつ欲しいでやんす。

:おまえは「オズの魔法使い」カカシかっ!!
  やっぱりその頭に詰まってるのはワラクズだったんだな。

:やだなあ、ジョークでやんすよぉ。
  こういう気のきいたジョークが言えるのも、脳が高度に発達してるからでやんす。

:高度に発達しているとはまったく思えんが・・・。
  それはそうと、このジル・ボルト・テイラー「奇跡の脳」
  最近の「脳」関連本の中でもじつに面白い一冊!

:親分、脳関連の本、そんなにたくさん読んでましたっけ?

:あー、うー、むにゃむにゃ。
  とにかくとても面白かったんだからいいだろ!

:で、どういう本なんで?

:著者は気鋭の若手脳科学者
  なんと1996年、37歳のときに脳出血で倒れてしまう。

:消防署が火事になるようなもんですね。

:この本は、彼女が懸命にリハビリに励み、
  ほぼ正常に回復するまでの8年間をつづった体験記だ。
  なんといっても、自身が脳の専門家だから、なみの闘病記とは一味違う。

:親分、闘病記って、ほかにどんなの読んでましたっけ?

:あー、うー、むにゃむにゃ。
  とにかくとても面白かったからいいのだ!
  なかでも興味深かったのは、脳出血に倒れたときの描写。
  そのときの脳が、じつはどんな状態だったかを冷静に解説すると同時に、
  実際に自分の心に浮かんだ言葉をそのまま文章にしている。

 (ああ、なんてこと、のうそっちゅうになっちゃったんだわ! のうそっちゅうがおきてる!)(32ページ)
 (あぁ、なんてスゴイことなの!)(32ページ)
 (わたしがしようとしているのは、どんなこと? なにをしているの? たすけをよぶ。
  そう、たすけをよぼうとしてるんだってば!)
(41ページ)

  と、まあ、こんな調子だ。

:脳卒中でも、結構いろいろ考えられるんですね。

:左半球にゴルフボール大の血腫ができたそうだが、
  最初に意識を失わなかったのは運が良かったんだろうな。
  記憶・認識が刻一刻と失われていくなか、なんとか助けを呼んで、
  病院に運ばれるまでの流れは、とてもスリリングだ。
  そして、本書で一番印象に残ったのは、つぎの一節。

 「脳卒中のあと、六ヶ月以内にもとに戻らなかったら、永遠に回復しないでしょう!」
  耳にたこができるほど、お医者さんがこう口にするのを聞いてきました。
  でも、どうか、わたしを信じてください、これは本当じゃありません! 
(133ページ)

  実際、著者は、8年かかって、ほぼ正常な状態まで回復している。
  脳には、やはり底知れない可能性があるということだな。

:なるほどー、じゃ、あっしの脳も、底知れない可能性を秘めているんですね!
  今から脳トレやるでやんす。

:ワラクズには可能性はないんじゃないかな。
  あと、右脳左脳の性格の違いについても、
  この人の手にかかると滅茶苦茶ドラマティックなことになる。
  情緒的感情的右脳と、論理的理性的左脳は、
  性格がぜんぜん違うんだ。
  著者は左脳を障害されたので、右脳優位になり、
  新しい感情が次から次へと巻き起こるのを体験する。
  「なにものにも束縛されず、あるがままに考える自由を持つ」右脳ワールドは、
  脳障害の結果とはいえ、なかなか魅力的な世界で、
  必ず回復できるものなら一度体験してみたいくらいだ。

:いやー、親分がそうなっても、うまく右脳を使いこなせなくて、困るに決まってやす。
  これがほんとの「右脳左往」なんちゃって。

:そういうしょーもないオヤジギャグは、右脳・左脳どちらから出てくるんだろうなあ・・・。

(09.7.30.)


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