柴田よしき/輝跡
(講談社 2010年)
Amazon.co.jp : 輝跡
「肉体的なことや技術的なことは、引退の最大の動機ではないんです。
戦力外を通告された時に、ああこれでやっと終わる、そう思った自分がいた。それがすべてです。
その時点で、ぼくは勝負する人間として燃え尽きたんだと思います。」
(249ページ)
一日一冊くらい、本を読みます。
基本的にエンタメ系かミステリ。 純文学は苦手です。
部屋でくつろいでいるときはもちろん、
トイレの中、風呂の中、寝床の中、たまに信号待ちの車の中(アブナイ)、
ヒマさえあれば読んでます。
音楽も聴かなくてはいけないし(いけないのか?)仕事もしなくてはいけないし(いけないです!)、
寝るのもけっこう好きなので、一日28時間くらいあると助かるんですが。
なおテレビはほとんど見ません。
さて、いろんな作家さん読んでおりますが、
「面白かった!」確率で言うと、
私の中でかなりの高打率を叩き出しているのが柴田よしきさん。
作品たくさんありますが、読んで裏切られた記憶があまりありません。
この「輝跡」もぐいぐい読まされました。
ひとりの野球選手がプロ入りしてから、日本球界を引退するまでを、連作短編の形で描きます。
しかし選手・北澤宏太自身はあくまでも狂言回しで、彼と直接・間接に関わる人たち(主に女性)の
行動や心のひだが、ときに激しく、ときに細やかなタッチで描写されます。
人物造形も、お決まりのパターンをちょっとひねってあって面白いです。
試合場面はほとんど出てきませんが、良質の「野球小説」であると同時に
さまざまな人生の断片を鮮やかに切り取った「人生小説」。
書きようによっては、いくらでも重く書ける題材ですが、
基本的にエンタメなのでタッチは軽め、スラスラサクサク読めてしまいます(私にとってはそれは長所です)。
そして読み終えたあとに、登場人物たちと自分自身の人生について、考えてしまいます。
やっぱり柴田よしきさんからは目が離せません。
(11.1.29.)