角田光代/この本が、世界に存在することに
(メディアファクトリー、 2005年)


Amazon.co.jp : この本が、世界に存在することに


<旅する本>
ネパールの古書店で見つけたのは、なんとが18歳のとき、近所の古本屋に売り払った本。
買って読み直してみると、以前読んだときとは全く印象が違うことに気づく。

<だれか>
恋人と訪れたタイで高熱を出して寝込んでしまった。 
宿には以前の宿泊客が残していった片岡義男の文庫本があった。

<さがしもの>
病の床にある祖母に、ある本を買ってきてほしいと頼まれた中学生の
目指す本はとっくに絶版、私は生まれて初めて「古本屋めぐり」をする羽目に。

ほか全9編


「本」に関する短編集。
女性の一人称で書かれたものが多いので、最初はてっきり実録エッセイかと。
つぎつぎ男をとっかえながら、いろんなところに旅行する人だなあ・・・などと思ってしまってすみません。
角田光代さんの文章はとても読みやすいです。 さすが直木賞。
基本的に優しい感じの短編が多く、読んでいて疲れません。
角田さんの小説はいくつか読みましたが、これほど温和な雰囲気の作品はこれまであったかな。

長い「あとがきエッセイ」も、著者の読書遍歴という感じで読み応えあります。
小さい頃から本が大好きだった角田さん、本さえ読んでいれば幸せな子供でした。
しかし小学2年生で、はじめてつまらないと思う本に出会います。 それは、サン=テグジュペリの「星の王子さま」
ところが高校2年生のときにもう一度読んで、「なんてすごい本なんだろう」

「以来、私はおもしろいと思えない本を読んでも、つまらないと決めつけないようになった」(233ページ)

同感です。 自分の狭い好みから外れているものを、うっかりけなすと思わぬ恥をかきます。
私も香川に越してくるまでは、うどんなんて、あんな味が無さそうなもののどこが旨いのかと思ってましたが、
今ではすっかり大好物 (食い物の話かい!)

食欲中枢・・・ではなくて読書中枢を刺激してくれる一冊。
私など、これを読んでいきなり「読書エンジン」がターボ全開、現在3冊の本を同時進行で乱読中。
相変わらず単純です。

(05.9.2.)

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