カーター・ディクスン/ユダの窓
(高沢治・訳 創元推理文庫 2015)
Carter Dickson/The Judas Window (1938)



Amazon.co.jp : ユダの窓 (創元推理文庫)


ジェームズ・アンズウェルは結婚の許しを乞うため恋人メアリの父親エイヴォリー・ヒュームを訪問する。
話の途中で意識を失ったアンズウェルが目を覚ましたとき、内側から鍵のかかった室内には胸に矢を突き立てられて事切れたヒュームがいた。
殺人の被疑者となったアンズウェル、弁護にあたるのは名探偵ヘンリ・メリヴェール卿
被告人の立場は圧倒的に不利、十数年ぶりの法廷に立つH・M卿に勝算はあるのか。
法廷ものとして謎解きとして、間然するところのない本格ミステリの絶品。


タイトルとトリックはあまりにも有名な、カーター・ディクソン「ユダの窓」
その昔(主に1970年代)「名探偵は君だ!」的な子供向けミステリ・クイズ本には、
「ユダの窓」のトリックがかなりの確率で取り上げられていたものです。
いまならネタバレで非難轟々かも。

ともかくそのせいで、

 「一度も読んでないけど私の中ではすでに読破したっぽいフンイキになっている!!」(@施川ユウキ)

だったので、あえて読もうと思わなかったのです。
しかしその後、とあるエッセイを読んで目からウロコが落ちました(誰の何というエッセイか忘れました)。

それに書かれていたのは、「ユダの窓」の真の魅力はトリックではなく、作品の大半を占める法廷シーンにおける駆け引きの妙であること。
そして例のトリックが明かされてもまだ「犯人は誰か?」という大きな謎が残っていることだ、といった内容でした(うろ覚えですが)。
俄然読みたくなったのものの、当時「ユダの窓」は絶版品切れ中。
今みたいにアマゾン・マーケットプレイスやヤフー・オークションも無い頃でした。

しかししかし、このたびついに創元推理文庫から新訳で刊行されましたっ! やったー!
読んでみると、確かにトリックを知っていても面白いです。
最後の犯人指摘も論理的で、さすがはカーター・ディクソンの代表的傑作、楽しめました。

ところで、ミステリ作家の都筑道夫はミステリ評論集「黄色い部屋はいかに改装されたか?」で、
「ユダの窓」のトリックを自宅で実践した結果を述べています(フリースタイル版 96〜97ページ)。
これも面白い読み物ですが、こうしていろんな人からああでもないこうでもないと議論されることが、まさに傑作の証明。
ちなみに、現代の日本の住宅ではこのトリック、無理だと思いますけどね(我が家でも無理です、たぶん)。

(2015.08.10.)


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