映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」
(1973)

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サウンドトラックCD
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実はミュージカル映画、大好きです。
「ジーザス・クライスト・スーパースター」(1973)は、
イエス・キリストの最後の7日間をミュージカル(というかロック・オペラ)化したもので、まさに20世紀の受難曲。
ティム・ライス作詞、ジュリアン・ロイド・ウェッバー作曲。
ミュージカル映画史上屈指の傑作ですが、なぜか日本ではDVD化されていません(訂正:2014年にやっとDVDが発売されました!)

大昔に買ったレーザーディスクをいまだに大切にしている私ですが、いやあ良い時代になったものです、
You Tubeで、ほとんど観られるではないですかこの映画。

<序曲>
イスラエルの砂漠、砂煙を上げてやってくるロケバス。
バスから降りて、衣装や小道具を身につける俳優たち。
70年代のヒッピー・ムーブメントを反映したファッションは、21世紀から見るとかえって新鮮な魅力にあふれています。
もちろん音楽も素晴らしいです。このオペラのライト・モチーフのほとんどがここで提示されます。

 

<天国に心奪われて>
いきなり切迫した調子で歌われるユダのアリア。
「我々は大きくなりすぎた。評判になりすぎた。
 ローマに征服されていることをみな忘れているのか。
 このままでは潰される。みんな殺される。
 俺は今でもお前を敬愛しているが・・・。お前は偉大なる無名者でいるべきだったのではないか?
 わかってくれ、ジーザス! 聞いてくれ、ジーザス!」

途中で7拍子になるところが、ユダの焦りを巧みに表現してます。

 

<今宵安らかに>
「もう悩まないで、心を乱さないで、すべてはうまくいっています」と歌いながら
布教に疲れたジーザスの脚に香油を塗るマグダラのマリア。
「その高価な香油を売れば貧しい人々に施しができるのに」と批判するユダ。
「我々に貧者を救う力があるだろうか? 考えろ、行動しろ、さもなければ私が亡きあとに後悔するだろう」と歌うジーザス
「亡きあとに・・・?!」ユダの何かに打たれたような表情と、ガッチリ握り合うふたりの手と手。
彼らの間にはマリアも入り込めない深い絆があることを暗示して見事です。
5拍子の曲ですが、とてもスムースで美しいです。

 

<イエスは死ぬべし>
守旧勢力であるユダヤ教司祭たちにとって、新参者ジーザスは邪魔というか・・・
「ヤツは危険だ」
民衆を煽動し、征服者ローマ帝国に対して暴動でも起こされたら大変。
「一人の男のために破壊が行われ、血が流されることになる。 ジーザス・マスト・ダイ!!」

 

<熱心党シモン>
「あなたは偉大だ。やがてこの国を手にするでしょう」とキリストをたたえるシモン(稲川淳二似)。
「みんなでローマを倒しましょう。 力と栄光を手に入れましょう」と歌い踊ります。
苦々しく眺めるユダ。ローマの軍事力には到底勝てないことが、彼らには分からないのか。
曲のあとでジーザスは「おまえも、皆も、力の何たるか、栄光の何たるかを判っていない」と静かに答えます。
迫力のダンスシーン、大きなスクリーンで見たいものです。

 (←サムネが阿波踊りにしか見えん)

<ザ・テンプル>
聖なる会堂で商売をする商人たちを蹴散らすジーザス。
「ここは祈りの場だ! これでは盗人の巣ではないか!」
キレるジーザスを心配そうに見つめるユダ。民衆に背かれることは危険だ・・・。
後半は、病人たちに助けを求められるジーザス。あまりの数の多さにパニックとなります。
神の子とはいえ、一人では無力・・・。
この曲は7拍子、変拍子がこれほど多用されるミュージカルも珍しいです。

 

<私はイエスがわからない>
マグダラのマリアの有名なアリア。
「たくさんの男を手玉に取ってきたわたし。しかしこの人はわからない。底が知れない。
 ・・・わたしはこの人がこわい」
と歌います。

 

<裏切り/血の報酬>
苦悩の末、ジーザスを裏切りユダヤ教の司祭たちのもとに行くユダ。
「報酬が欲しいのではない、来なければならないから来たのだ」
「木曜の夜、ジーザスはゲッセマネの園に無防備でいるだろう」

ユダの心象風景としての戦車や戦闘機の効果!

 

<ゲッセマネの園>
最後の晩餐を終えたジーザスが天に向かって歌うアリア。
「私は知りたい。なぜ死なねばならないのですか? せめて犬死ではないことを信じさせてください。
 わたしがあなたの元に行かねばならないわけを教えてください 知らねばならないのです、神よ!」

唐突に挿入される変拍子が切迫感を高めます。
「いいでしょう、死にましょう! わたしがどのように死ぬか、ご覧になるが良い! 
 わたしの気が変わらぬうちに殺しなさい!」


 

<ヘロデ王の歌>
逮捕されたジーザスは、ユダヤの王ヘロデの前に引き出されます。
「ジーザス、会えて嬉しいよ。実は私は君のファンなんだ、さあ、この水をワインに変えてくれ、
 スイミング・プールの水の上を歩いてくれ、そうすれば無罪放免だよ」
しかしなにもしないジーザスに王は怒り狂い、追い出してしまいます。
陽気なホンキイ・トンク・ナンバー、衣装もダンスも超素敵です。

 

<裁判>
こんどはローマ総督ピラトの前に引き出されたジーザス。
温厚なインテリのピラト、「この男は一体どんな悪事を働いたのか? 何も悪いことはしていない」
なんとか穏便に済ませようと、鞭打ちの刑で手を打とうとしますが、
死刑を求める群衆、そして自ら死を望むかのようなジーザスの発言に、ついに叫びます。
「死にたければ死ぬが良い、哀れな操り人形よ!」

<スーパースター>
最も有名な曲。クレーンで空から舞い降りたユダが、ジーザスに向かって疑問をぶつけます。

 

 お前を見るたび不思議に思う
 なぜこんな手にあまる事をした?
 計画してたんならもっとうまくやれたはずだろ?
 そもそも、なぜ古代の、あんなへんぴな場所だったんだ?
 現代なら、全世界を相手に出来たんだぜ
 BC4年のイスラエルにはマスコミもなかったんだぜ

 悪く思わないでくれ  知りたいだけなんだ

 ジーザス・クライスト、ジーザス・クライスト
 あなたは誰? 何を犠牲にした?
 ジーザス・クライスト・スーパースター
 あなたは皆が言ってるとおりの存在だと思ってるの?

 天上の友人たちをどう思ってる?
 お前は別として、いちばんイケてるのは誰だった?
 仏陀はどうだ? おまえと同じ場所にいるのかい?
 マホメットは本当に山を動かせたのか? それとも単なるPR?
 おまえの死に方は予定通り? それともなにかの間違いか?
 記録破りのひでえ死にかたをすることは知ってたのか?

 悪く思わないでくれ   知りたいだけなんだ

 ジーザス・クライスト、ジーザス・クライスト
 お前は誰だ? 何を犠牲にした?
 ジーザス・クライスト・スーパースター
 お前は皆が言ってるとおりの存在だと思ってるのか?

 ああ、ただ知りたいんだ、教えてくれ、ジーザス!



<ヨハネ伝19章41節>(エンディング)
混沌とした現代音楽風サウンドの中にキリストが息絶えると、衣装を脱いだ俳優たちが再びロケバスに乗り込みます。
マグダラのマリア、ユダが最後に乗り、バスは走り去りますが、ジーザスの姿は見えません・・・。
心憎いほどに秀逸なエンディング。

 

1973年の作品ですが、今見ても最高に新しく、衝撃的です。
イエスが白人、ユダが黒人、マグダラのマリアがアジア系というキャスティングも実に興味深いです。

日本版DVD、早く発売して欲しいですねえ。

(07.5.1.)


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