イアサント・ジャダン/ピアノ・ソナタ作品4〜6(全9曲 2枚組)
(Marek Toporowski:フォルテピアノ)



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夭折の天才(溶接ではない)イアサント・ジャダン!

イアサント・ジャダン(Hyacinthe Jadin, 1776〜1800)。
フランスの音楽一家に生まれ、兄ルイ・エマニュエルとともに音楽の英才教育を受けます。
13歳で自作がコンセール・スピリテュエルで演奏されるほどの神童ぶりを発揮し、
1795年には若干19歳でパリ高等音楽院のクラヴサン科教授に就任、フォルテピアノの名手としても活躍します。
しかし結核により22歳で音楽活動から引退、24歳で死去しました。

「イアサント」という名は英語読みすると「ヒアシンス」、なんか可愛いですね。

  

その作品には天才のひらめきというか、なんとも言えない可憐な魅力があります。
15曲のピアノ・ソナタを残しているそうですが、このCDには9曲が収録されています。

 ピアノ・ソナタ作品4-2 嬰ヘ短調 第3楽章 アレグロ (なにこのキャッチーさ)
 

濃密かつひそやかなロマンをしたたらせながら、さらりと優雅に駆け抜けて行く音楽。
とくに短調作品の甘酸っぱい愁いがたまりません。
スタイル的にはハイドンとモーツァルトを足して2で割ってシューベルトを振りかけたような雰囲気。
優美ですが軟弱ではなく、古典派の枠にとどまりながらロマン派の時代を予感させます。

 ピアノ・ソナタ作品5-2 ニ長調 第2楽章 プレスト (明るく始まりますが随所で短調に転調、とくに展開部はドラマティックです)
 

どの曲にも天才の業が薫ります。
あと10年長生きしていたら、どれほど素晴らしい曲を残してくれたことでしょう。

ゆっくりした楽章の抒情と繊細さがこれまた胸キュンものです。

 ピアノ・ソナタ作品6-1 ハ短調 第2楽章 アンダンテ・ソステヌート (内省的で瞑想的な素晴らしい緩徐楽章)
 

なお、兄のルイ・エマニュエル・ジャダン(1768〜1853)は84歳まで長生きしました。
作曲家、ピアニストとして活躍し、1802年にはパリ音楽院の教授になっています。
数多くの作品を残し、とくにオペラに力を入れたそうですが、残念ながらほぼ忘れ去られています。

(2024.06.01.)

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