猪熊弦一郎のおもちゃ箱〜やさしい線
(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館監修 小学館 2018年)
Amazon : 猪熊弦一郎のおもちゃ箱: やさしい線
「美術館は心の病院です」(猪熊弦一郎)
親分:このHPの管理人が住む丸亀市は、駅のすぐ前に美術館がある。
駅を出て右を見ると、このような建造物が目に入る。
ガラッ八:ひゃあ〜、田舎町にみょうちきりんな建物が!
主な目的は、初めて来た人をびっくりさせて追い返すことでやんすか。
親分:追い返してどうする! しかし実際、知らずに来た人はびっくりするらしいな。
これは丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(Marugame Inokuma Museum Of Contemporary Art, 愛称:MIMOCA、1991開館)だ。
丸亀市ゆかりの芸術家・猪熊弦一郎(1902〜93)の名前を冠した美術館で、設立に当たっては猪熊自身が積極的にアイデアを出した。
エントランスの壁画を描き、正面広場のモニュメント制作の陣頭指揮をし、
設計はのちにニューヨーク現代美術館新館やGINZA SIXを設計することになる谷口吉生に猪熊自身が依頼した。
つまりこの美術館自体が、猪熊の作品の一つと言ってもいい。
ガラッ八:いのくま・・・げんいちろう、ですか? 知らねえなあ。 干支みたいな名字の人ですね。
親分:いや、「くま年」、ないから。
猪熊弦一郎の作品で一番知られているのは、三越百貨店の包装紙だろうな。
ガラッ八:あ、これ、知ってるでやんす! 三越といえばこれですよね。
デパートの食堂で食べたお子様ランチの味を思い出すでやんす。
親分:あいかわらず食い物に関してだけは驚異的な記憶力を誇るなぁ。
ちなみに"Mitsukoshi"という文字を書いたのは当時の三越社員でのちに「アンパンマン」の作者として有名になるやなせたかし。
あと、上野駅の中央改札口の壁画も猪熊の作品だ。
ガラッ八:ふむ、こんど参勤交代でお江戸に参ったら観てみるぞよ。
親分:なんで突然殿さまになってるんだよ。
MIMOCAは内部も隅々まで猪熊の美意識が行き届き、建物自体が芸術作品として鑑賞に値する。
館内は原則写真撮影OKなのも嬉しい(フラッシュは禁止)。
ガラッ八:よさそうなところですね〜、今度行ってみるでやんす。
でもあっし方向音痴なんで、たどり着けるかどうか心配でやんす。
親分:丸亀駅の目の前だよ! 迷うには超天才的な方向音痴の才能が必要だよ!
ただし行くなら急いだほうがいいぞ。
MIMOCAは2018年10月1日から補修工事のため長期休館に入るんだ。
ガラッ八:長期って、いつまでですか?
親分:2020年3月末までの予定らしい。
ガラッ八:1年半も! そりゃ長いですね〜。
親分:暇をみてちょくちょく行ってた美術館が閉まっちゃうのは寂しいよ、いずれ再開されるとはいえ。
まあしかたがない、今年小学館から出た本「猪熊弦一郎のおもちゃ箱」でも読みながら、再開を待つとしよう。
ガラッ八:これは、画集ですかい?
親分:猪熊弦一郎の主要作品の写真をふんだんに載せた画集といえば画集だが、
ほかにも簡単な伝記、アトリエや自宅の写真、猪熊自身が書いたエッセイなどが収録されている。
自由で素直な精神を持った、心の底からのオプティミストだったんだなと思ったよ。
繰り返し読んで飽きない、観て飽きない、愉しい本だ。
ガラッ八:で、どういう絵を描いてるんで、この人?
親分:こんな感じだな。
ガラッ八:いやいやいや、これ一人の人が描いたんじゃないでしょ。
親分:いやいやいや、ぜんぶ猪熊弦一郎の作品で間違いないぜ。
ガラッ八:それにしては作風がごちゃごちゃごちゃなんですが。
親分:猪熊は90年の生涯にわたって作風を変化させながら大量の作品を描いた。
個人的には後期の抽象画が好きだが、初期の具象画も鋭いセンスを感じるし、
遊び半分で描いたようなスケッチすら味わい深い、さすが巨匠だ。
あと、雑誌「小説新潮」の表紙画も永いこと手がけていた。
ガラッ八:へえ〜、全然知らなかったけど、スケールの大きな人だったんですねえ。
ちょっと興味が出てきたでやんす。
親分:まさに20世紀日本美術界の巨人の一人と言えるな。
ガラッ八:するってえと、身長も3メートルくらいあったとか?
親分:あるかっ!
(2018.09.18.)
私の絵にリクツはありません。
絵は楽しいから描くのです。
言葉なんかわからなくても
楽しいことがわかればいい、絵もそうです。
何を描いてあるのかわからなくても、
美しいということがわかれば、
それがいちばんいい絵の見かたです。
(猪熊弦一郎)
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