似鳥鶏/育休刑事
(幻冬舎 2019)



Amazon : 育休刑事


県警捜査一課・秋月春風(あきづきはると)巡査部長は生後三ヶ月の息子・(れん)くんのため育休中。
赤ちゃん用バッグを抱えての外出にも慣れた頃、ひょんなことから質屋強盗の人質になってしまう。
だが蓮くんのウンチやミルクは事件とお構いなし。ふたりは無事に生還できるのか? (「人質は寝返りをする」)
六ヶ月になった蓮くんを連れて実家からの帰り道、春風は高速道路で特徴的なラッピングカーを目にする。
その模様はぐずる蓮くんをひと時ご機嫌にしてくれたが、知らず知らずのうちに犯罪のアリバイ作りに協力してしまうことに。(「瞬間移動のはずがない」)
県警本部庁舎に不審物が届けられた。それは最近刑務所から出所した犯罪者からの復讐予告。
いっぽう春風は晴れた休日の昼下がり、家族連れで賑わうショッピングモールに出かけた。
蓮くんを姉・涼子にあずけ、久しぶりに妻の沙樹さんとデート気分を味わうはずだったが。(「お外に出たらご挨拶」)
の三編を収録。


ウチの娘たちは二人とも無事に社会人となり都会で就職しました。
ここ香川県に帰ってくることはもうないでしょう。
さみしいけれど、ちゃんと巣立ってくれたので子育ての責任はいちおう果たした・・・と言っていいのかな。

本人たちは「自分で勝手に大きくなりました」みたいな顔をしていますが、けっこう大変でした。
幸い、子どもたちが幼かったころは職住近在で、職場まで歩いて3分くらい。
おまけに当時はまだ仕事もヒマだったので、昼休みに家に帰って家族でご飯を食べて子供を昼寝させたり、
5時チンで家に帰って子供とお散歩したりしました。
風呂に入れるのと寝かしつけは私の仕事でした。
なかなか寝ない子をチャイルドシートに乗せて深夜の街をドライブしたこともあります(不思議に寝てくれました)。
近くにおじいちゃん・おばあちゃんもおらず夫婦二人での子育て、ニョウボの補佐役としてけっこう頑張ったと思っておりましたが・・・。
似鳥鶏「育休刑事」秋月春風巡査部長にはかないません、この人凄いです。
捜査一課の刑事でありながら堂々と育休をとり育児を完璧にこなしたうえ、課長に呼び出されればわが子を抱っこして事件現場に。
随所にちりばめられた育児に関するウンチ、もといウンチクがリアルで面白く、「育児あるある」のオンパレードです。

内容は設定から想像される通りでありまして、安心して読み進められます。
ミステリとしてのレベルはそこそこですが(←失礼)、リーダビリティは抜群。
春風の姉・涼子のスーパーウーマンなキャラが素敵なスパイスとなり、さらに楽しいです。
ニョウボにも勧めたところ、さっそく喜んで読んでいます。

ちなみに本作にはちょっとした叙述トリックが仕掛けられていて、最後の第三編である人の正体が明らかとなります。
素直で純朴で人を疑うことを知らないワタシは、すっかり騙され「やられたー!」と叫びましたが、ニョウボは第一編を数十ページ読んだだけで、

 「この人、じつは〇〇じゃないの?」

いきなり見抜いておりました。
なんつうカンの鋭い女だ・・・。
やっぱり女は恐るべしであります。

なお、著者名は「にたどりけい」、タイトルは「いくきゅうデカ」と読みます。


(2019.08.26.)

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