惣領冬実/太陽のイヂワル
(講談社 2002年)
Amazon.co.jp : 太陽のイヂワル―惣領冬実傑作短編集
「ブックオフ&ブックマーケットの前を素通りできない病」に冒されて長い私ですが、
ついに家族にも感染してしまいまして、先週の日曜日は一家で入り浸っておりました。
100円の文庫本やコミックを、深く考えずにポンポン買いあさります。
でも家に帰って冷静に見ると、たいして面白くもない本ばかり・・・。
ロクに読まずにまた売り払ってしまうという、ブックオフ・ユーザー「カモネギ・スパイラル」に
ずっぽりはまっておるではないか貴様、というご指摘が各方面より感謝感激雨あられの今日この頃です。
でも、たまにこういう「当たり」があるから、足が洗えません。
表紙の絵とタイトルは、古代歴史モノか、太陽神崇拝マンガ(どんなんや?)みたいですが、じつは現代日本を舞台にした短編集です。
全4編とも、悩みやコンプレックスを抱えた若い女性が主人公。
それにしても、いったいなんなんですかこのただごとではない密度の高さは。
どの短編も高品質、読後感もスバラシくて、へたな小説よりなんぼか内容濃いですよ。
そして絵の力、絵力。
人物の表情のわずかな変化で、一言のセリフも使わずに、
小説ならば何行分もの文章に匹敵するであろう心理描写をやってしまいます。
「奇妙な遺伝子」のドンデン返しも、マンガだから鮮やかに決まるのであって、
小説でこれをやろうとしたらものすごく大変なことになるはずです。
森絵都、角田光代などの小説をつい連想してしまいますが、これら直木賞受賞大先生方の短編と比べても、
作品として全く遜色のないクオリティではないかと。
これはホントに拾い物(単に私が知らなかっただけか)、と喜んでアマゾンのリンクを貼ろうとしたら、
2007年1月現在絶版ですか〜、そりゃないぜ不二子ちゃん〜。
でも中古市場には結構出回っているようで安心です。
掲載誌は「モーニング」「アフタヌーン」。 いわゆる青年誌ですね(少女マンガではないのか・・・)。
惣領冬実は現在、「モーニング」に「チェーザレ・破壊の創造者」を連載中。
塩野七生「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」が愛読書であった私といたしましては一も二もなく購入(もちろん新刊で)。
緻密な時代考証と、力強い絵があいまって、なんという魅力的なチェーザレ像。 惚れたぜ。
これまた大傑作の予感が。
(07.1.20.)